愛の病

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その結果、包丁やフライ返しやおたまを投げつけられるほど、相手にされるようになった。 会話も前より弾み、今では一緒に食事をするほどの仲だ。随分、進展された。 一番のお気に入りはこたつに入り一つの鍋をつついた食事会なのだそうだ。ほっこりほこほこしながら、足がくっついた〜くっつかない〜、どけろ、出ろ、帰れと言われるほどの親密な時間を過ごした、らしい。  拉致事件も鍋も、どちらもグレイが用事で屋敷を空けている時に他の者を引き連れて起こした出来事だ。 グレイがいたならば、そんな行儀が悪いことはさせない。誘拐するにも手順を踏むし、鍋会に参加するにも突撃ではなく根回しはしておく。  説教はさせてもらったが、やりたいことは気持ちのままに動く方なので今後もそういうことはなくならないだろう。 こたつに鍋というのは、どんなものか少し興味があるので、今年の冬も開催されるなら美柚さまに事前に話を通しておこうと思う。 とにもかくにも、双子と距離が近くなったのも美柚(彼女)の存在が大きく、今ではアルテミスさまのお気に入りの中に彼女も入っている。  グレイから見ても彼女の言動は興味深く、目が離せず、ちんまりして可愛く、関心が尽きない存在だ。  今までは愛を叫んでばかりで、相手の行動をあまり気にされていなかったがここにきてそういうのも気にされるようになったと、親バカならぬ執事バカな視線を持ってグレイは感動していた。  カップを用意しながら、グレイはアルテミスの愛の病についてどのように話し合おうか主人に見えないようにふふふっと笑った。
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