愛の病

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 アルテミスの愛は一方通行が当たり前だった。それが少し通り過ぎなくなってここ最近満たされていたのだが、事情が変わってきた。  『愛』は返されてこそ完全に満たされるのではないかとも思うが、見返りを望んで愛するものでもないので、やはり愛したいように愛するのが幸せなのだろうと思う。  相手がどれだけ迷惑がろうとも、好きなように気持ちのままに動くのがアルテミスだ。 良き感情を隠していては伝わらないし、それはナンセンス。  なら、どうしたいのだろうか……、そこがわからないから悶々とするのかもしれないなと、ピンと背筋の伸びた執事の姿を見ながら思う。  ──やっぱり、寝室が一緒ってどうなのかな?  愛する双子とお気に入りの美柚が一つ屋根の下どころか、寝室をリフォームし同じ部屋で寝ていることを知ったアルテミスは、心中ばっきばきぼっこぼこの、もっやもやだ。 それを誰も気にしていないのだから、世も末だ。  そんなことを考えながら、ころころ転がしていた飴がもろもろと口の中で壊れる。もともとそういう風に出来ているようで、口の中で消えて無くなっていった。 そのタイミングをまるで推し量ったように目の前にカップを置かれ、紅茶が淹れられる。 「どうぞ」  アルテミスは姿勢を正すと、ゆっくりと手に取り一口飲んだ。口の中に残る甘い味と、紅茶の味が最初は微妙だったが温かさにほっと息を吐く。
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