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那須野が原の再会
西郷従道と大山巌が道の駅に着いてしばらくした後、松方正義と山縣有朋がやってきた。
「いらっしゃーい」
自分の家のように笑顔で青木周蔵がそれを迎える。
「まるで自分の家みたいな顔をしてるな、青木」
「だってほら、あそこに旧青木家那須別邸があるし」
青木が明治の森・黒磯の中にある白い建物を指さす。
それは青木の言う通り、かつて青木の住んでいた邸宅だった。
「ずいぶん、綺麗に残ってるんですね、青木さんの家」
「この地に僕はとても縁があるからね。なにせ、墓もこの那須塩原青木にあるんだよ」
「私や山縣さんも晩年は結構、那須の地にいたのですが、青木さんは筋金入りですなぁ」
松方に褒められて、青木が満足そうに笑う。
「それじゃ、まあ、みんなで旧交を温めるためにお茶でもしようか」
「酒はないもすか?」
大山の問いに山縣が遠慮がちに言う。
「あの、大山さん、まだ未成年がいますので、酒は……」
視線を向けられ、山田が切れる。
「俺は! もう! 20過ぎてる!!」
「え? 山田、高校生じゃないのか?」
驚く山縣を山田が下から睨みつける。
「あーあー、山縣ダメだって。山田に小さいとか、可愛いとかそういう言葉は地雷だって知ってるだろうに……」
「青木! お前も今、どさくさに紛れて言っただろう!」
「あはは。長州の皆さんは元気だねぇ」
みんなの様子を眺めて、従道が愉快そうに笑う。
その笑いに毒気が抜かれたのか、山田が振り上げかけた手を下ろした。
青木は笑って茶の用意を始めた。
「ま、今回は酒抜きだ。次に会うときは『渡邊葡萄園』のワインでも持ってくるよ」
「千本松牧場にも、天鷹生という大田原で特別に醸造してもらった冷酒があるので、今度持って来もそう」
松方がニコニコと自分の牧場のオススメを口にする。
料理が並べられ、それぞれが座って、再会を祝う。
次は蛇尾川や那須疏水旧取水施設がどうなっているか見に行こうとか、南ヶ丘牧場に遊びに行ってみようという話をしながら、互いの現状を話して盛り上がったのだった。
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