最終話

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最終話

祥太から彼女が出来たと連絡が来た。 私にではなく、直樹さんにーーー。 「何で、姉に報告しないわけ?」 『そんな事で電話してくるなよ?今から部活なんだ!』 「次の試合は、直樹さんと観に行くから絶対レギュラー取りなさいよ?彼女も応援来るんでしょ?紹介しなさいよ!』 『分かったから…。あ、試合では叫ぶなよ?お腹に響くんじゃね?』 祥太は、私より直樹さんへ連絡する事が多くなった。 教員免許を取る事についてや、バスケの事。 彼女の事までーーー。 「ちょっと嫉妬しちゃったー!」 「俺に?何でだよ?」 学校に行ってる直樹さんから、祥太に彼女が出来たらしい、とメッセージをもらって慌てて祥太に電話した。 「だって!私に一番に教えてくれると思ってたのに!」 帰ってきた直樹さんとご飯を食べながら、祥太の話になった。 「彼女の話はついで!あ、今日のコレ、旨い!」 センスがないと言われた料理は、直樹さんに褒められるまで成長した。 「…で?紗奈の検診はどうだった?分かった?」 「順調です!」 「…うん…。どっち?」 私は妊娠して、6か月になった。 妊娠が分かった時から、思っていた。 絶対、男の子だとーーー。 「ふふっ…やっぱ、母親のカンはすごいよ!」 「男?じゃあ、名前はどうしようか…」 直樹さんは、新しい学校でもまたバスケ部の顧問になった。 新しい学校には、他にも顧問の先生が居て、休みは取りやすくなった。 久しぶりに二人で祥太の試合を観に行った。 「まーた、上手くなったな…祥太。」 「ほんと?そういうのは分からないなぁ、私…。」 やっぱりバスケしてる祥太は楽しそうだった。 「ねぇ?彼女はどこかなぁ?」 観客席を見ても分からないのに、探してしまう。 「紗奈〜、小姑になるなよ?」 「大丈夫!」 祥太、私は凄く幸せだから。 次は祥太だよ? 試合が終わった後、祥太に手招きされて直樹さんと行くと、彼女はバスケ部のマネージャーだった。 祥太は、彼女に私と直樹さんを紹介した。 「…紗奈と、オーセン。」 彼女は一瞬ポカンとしたけど、すぐに祥太に言った。 「言葉が足りない!」 そして、私達を見ると笑顔になった。 私と直樹さんは顔を見合わせた。 「太田先生と、お姉さんの紗奈さんですよね?はじめまして。篠原 早紀です。」 彼女の雰囲気に似てる人が、すぐに頭に浮かんだーーー。 祥太の彼女の印象はーーー。 カホちゃんだった。 早紀ちゃんの話では、今朝の試合前に、私と直樹さんが来るから紹介すると言われたらしい。 どんな関係かは、ちゃんと祥太から聞いていたけど、こんな急に紹介されるとは思ってなかったと言っていた。 「最初の一言…、笑えたね?」 「俺、びっくりしたよ…。」 帰りの車で、直樹さんに話した。 「なんかね、…カホちゃんみたいだった…。」 「それって…、祥太のお母さん?」 「うん。…はっきりモノを言うとことか、…笑顔の感じとか…。雰囲気も…。あ、祥太と早紀ちゃんには言わないで?」 「分かってるよ。」 ーーー祥太、幸せになって。 車の助手席に座って、お腹を撫でた。 「あっ!今、動いたかも!!」 「…えっ!!何だよ、急に!」 「何か…ぽこんって…。触る?」 「いや、今はとりあえず家に帰る!帰ってから!」 家族が増えるーーー。  私にも、これからは祥太にも。 直樹さんは、超が付くほどの安全運転で家まで運転した。 家に着いて、ソファに座った私のお腹を床に座って触ってきた。 「…蹴らないなぁ。あー…、残念!」 「ふふっ。これからいっぱい動くよ!また触って!」 直樹さんは、わたしの隣に座り直して、お腹を撫でた。 「直樹さん…?」 「んー?」 「…ありがとう。私、直樹さんと結婚して…、赤ちゃん授かれて…ほんと嬉しい。」 撫でていた手を止めて、私を見た。 私は直樹さんにもたれかかった。 「俺も…。紗奈を初めて見た時はまだ若くてさ…。」 「…もう30過ぎちゃたもんね〜!」 「ははっ…。祥太が紗奈に感謝してるように、俺も祥太に感謝してるよ…。」 直樹さんの大きくて優しい、私の大好きな手が抱きしめてくれたーーー。 「…紗奈、捨てないでくれて、ありがとう。」 「ふふっ!まだ分かんないよ〜?」 「えっ?そうなの?!」 「ん〜…、バスケやってもケガしないで?あと、車は安全運転だけど、それでも気をつけて?…あと、…忙しくても、子供と遊んであげて!それから…」 「まだある??」 「…たまには、…私の相手もしてよ?」 直樹さんの腕に力が入った。 「ははっ!分かった…。最後の要求は最優先にするよ!…育休の相談しようかなー…。」 優しい笑顔が近づいて、キスをした。 祥太。 私は大丈夫、すごく幸せーーー。 end
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