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『大丈夫。夏夜は僕が守るから』
両親が亡くなったあの日━━。
親族が集まった葬儀で━━。
兄貴は私にそう言いながら、中学生だった私の頭に優しく触れてくれた。
━━━━
━━━━━━
『暴走車が突っ込んできたって』
『避ける間もなかったって……』
周りから、ぼそぼそと聞こえてくる話し声━━。
煩い……。人の不幸を聞こえよがしに話すな━━。
『夏夜ちゃんなんて、まだ中学生で……』
『ねぇ……。かわいそうに……』
煩い……。だったら、なんだって言うんだ……。
あんた達が両親の代わりになってくれるのか? 両親を生き返らせてくれるのか?
『そう言えば……夏夜ちゃんの身の振り方はどうなってるの?』
『さぁ……。このままってわけにはいかないでしょ? お兄ちゃんも居ることだし……』
『でも、お兄ちゃんは大学生なんでしょ?』
『まぁね……。お兄ちゃんの方はなんとかなっても、夏夜ちゃんの方は……。どこかで預かるしか……』
『うちは無理よ。二人、子供が居るし』
『うちだって厳しいわよ。うちも無理だから』
『でも、このままってわけにも……』
煩い━━。煩い━━。黙れ━━。
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