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「技あり!! 一本!!」
空手道場に響く声と同時に緊張を解く。
私の緊張が解けたのを見計らったかのように、道場全体の緊張も解けたような気がした。
挨拶を交わし、礼をし、自分の座っていた場所に戻る。
ミネラルウォーターのペットボトルを手にして、一口含んだ時━━
「せーんぱーいっ!!」
聞きなれた声と一緒にガバッと抱きつかれる。
「せんぱぁぁぁい!! もう、超かっこいい!! さすがは私の先輩!! もう、抱いて欲しい!!」
「あ、あのね……えふりちゃん……」
苦笑しながら、抱きついてきた後輩の手を引き剥がす。
その様子を遠くから見ていた道場の師範代がつかつかと私達に近づいてきた。
「こらっ!! お前は……稽古中は道場に部外者は入るなと何回言えば……」
「部外者じゃなくて、道場の娘ですー。バカ兄貴!!」
「誰がバカ兄貴だ!! 師範に向かって!!」
「バカ兄貴だから、バカ兄貴って言ったんですー!!」
「なんだと!? てか、お前、大学はどうした!?」
「今日は先輩と同じく午前中の講義だったから、先輩にくっついてきたの」
「きたのじゃねぇ!!」
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