act.1 兄と妹

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「なんでよ!! 兄貴が……兄貴がなんで!!」 『夏夜ちゃん!! 落ち着いて!!』 「嘘よ!! だって……だって、取材に行くだけだからって……」 スマホの向こう側で、遼ちゃんが困ったようにしているのがわかる。 なんて、声をかければいいのかと思って、黙ったまま、叫ぶ私の声を聞いている。 情けない話だけど、遼ちゃんに全てをぶつけるしか、心の行き場がなかった。 「ねぇ、なんでよ……。兄貴……」 堪えきれず、涙が溢れ━━涙は次第に嗚咽に変わっていく。 『夏夜ちゃん……。今から俺が迎えに行くから……。夏夜ちゃんが居るのは道場の近く?』 私を落ち着かせるようにして、遼ちゃんが穏やかに話す。 「うん……。道場の近所にある……コンビニの駐車場……」 『わかった。すぐに行く。それまで一人で大丈夫?』 「うん……」
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