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「なんでよ!! 兄貴が……兄貴がなんで!!」
『夏夜ちゃん!! 落ち着いて!!』
「嘘よ!! だって……だって、取材に行くだけだからって……」
スマホの向こう側で、遼ちゃんが困ったようにしているのがわかる。
なんて、声をかければいいのかと思って、黙ったまま、叫ぶ私の声を聞いている。
情けない話だけど、遼ちゃんに全てをぶつけるしか、心の行き場がなかった。
「ねぇ、なんでよ……。兄貴……」
堪えきれず、涙が溢れ━━涙は次第に嗚咽に変わっていく。
『夏夜ちゃん……。今から俺が迎えに行くから……。夏夜ちゃんが居るのは道場の近く?』
私を落ち着かせるようにして、遼ちゃんが穏やかに話す。
「うん……。道場の近所にある……コンビニの駐車場……」
『わかった。すぐに行く。それまで一人で大丈夫?』
「うん……」
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