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「夏夜ちゃん。コーヒー……飲める?」
冷たい警察署の廊下━━。備え付けの長椅子に座っている私に、遼ちゃんが躊躇いがちに聞いてきた。
遼ちゃんが手渡した缶コーヒーを無言のまま受けとる。
「警察署の自販機で悪いんだけど。てかさ、紙コップの自販機のやつが調整中って……。ないよね? 警察なら、そこんとこもっとしっかりしとけって話だよな?」
「そうだね……」
笑いながら悪態をつく遼ちゃんに、私も少し笑いながら答える。
「あ……」
「どうしたの?」
「ヤバイ。今の聞こえたのかな? なんか、あっちに居るおまわりさんに睨まれた」
「え?」
「うわぁ……。どうしよう。駐車違反とかできないじゃん。目をつけられて、憂さ晴らしに厳しく採点されて……。あと、取材拒否されたり……」
「いや、それ……普通に職権乱用だから」
「夏夜ちゃん……。人間は権力を持つとそういうことやるんだよ。ジャーナリストとして、たくさん見てきたからねぇ……」
「もう、遼ちゃんってば……」
芝居じみた口調で「うんうん」と頷く遼ちゃんに苦笑する。
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