act.1 兄と妹

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━━━━ ━━━━━━ 「夏夜ちゃん。コーヒー……飲める?」 冷たい警察署の廊下━━。備え付けの長椅子に座っている私に、遼ちゃんが躊躇いがちに聞いてきた。 遼ちゃんが手渡した缶コーヒーを無言のまま受けとる。 「警察署の自販機で悪いんだけど。てかさ、紙コップの自販機のやつが調整中って……。ないよね? 警察なら、そこんとこもっとしっかりしとけって話だよな?」 「そうだね……」 笑いながら悪態をつく遼ちゃんに、私も少し笑いながら答える。 「あ……」 「どうしたの?」 「ヤバイ。今の聞こえたのかな? なんか、あっちに居るおまわりさんに睨まれた」 「え?」 「うわぁ……。どうしよう。駐車違反とかできないじゃん。目をつけられて、憂さ晴らしに厳しく採点されて……。あと、取材拒否されたり……」 「いや、それ……普通に職権乱用だから」 「夏夜ちゃん……。人間は権力を持つとそういうことやるんだよ。ジャーナリストとして、たくさん見てきたからねぇ……」 「もう、遼ちゃんってば……」 芝居じみた口調で「うんうん」と頷く遼ちゃんに苦笑する。
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