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男はベットに近づき、小さな声で、横たわる人物に呼びかけた。
「夏夜(かや)ちゃん、大丈夫かい?」
夏夜と呼ばれた人物が寝返りをうちながら、男に答えた。
「遼……ちゃん……」
夏夜が起き上がろうと動くのを━━男━━遼が制した。
「起きなくてもいいから。寝たままでいいから……」
「ごめん……」
「まだ、しんどいんだろう? 慣れてないと船酔いはキツイから……」
夏夜が自分の額に手を当てながら、遼の言葉を噛み締める。
「情けないなぁ……。遼ちゃんに大丈夫だからって啖呵きって、船に乗ったのに……。船酔いで起き上がれないなんてさ……」
「船酔いは、逃げ場がないからね。揺れ方も独特だし、慣れてないとね。それに……ほら、夏夜ちゃんは女の子だし……」
「遼ちゃん」
苦笑している遼に、冷めたような声で夏夜が呼んだ。
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