プロローグ

4/10
前へ
/196ページ
次へ
「その名前は……捨てたから」 冷めた目を遼に向けながら━━ 「夏夜じゃない。私の名前は……」 『光姫琥太郎』 きっぱりと言い切った夏夜と遼の間に、沈黙が流れる。 遼が唇を噛み締め、何かを決意したように、沈黙を破った。 「夏夜ちゃん……。やっぱり戻ろう。島についてから、折り返しの船に乗って……」 「遼ちゃんはどうするの?」 遼の言葉を遮り、夏夜が見つめる。 「俺は……勿論、そのまま島に残るよ。残って、姫ちゃんの手懸かりを探して……」 「なら、私も残る。兄貴の手懸かりを探す為に」 強い言葉でそう言われ、遼はまた、沈黙する。
/196ページ

最初のコメントを投稿しよう!

373人が本棚に入れています
本棚に追加