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「僕と結婚してください」
長年言えなかったプロポーズを緊張しながらも告げた。
「私達、とうの昔に結婚してるじゃない」
力を入れて口角を上げ、妻は微笑んだ。
「プロポーズがなかったなかった、ってよく愚痴ってたろ、だからさ……」
私は少し照れ臭くなり、頭をポリポリ掻いた。
「ありがとう……」
そう言って妻は咳き込んだ。
私は妻から伸びるコードやチューブを外さないよう丁寧に布団を被せる。
「ゆっくりお休み」
私の言葉に安心したのか、ゆっくりと目蓋を閉じ、
「返事は明日ね……」
精一杯の声でボソボソと言いながら眠りについた。
病院からは、出来るだけ側に居てあげてくださいと言われている。
簡易ベッドもあるが、私はこのまま椅子に座って真横で見守る事にした。
妻の横顔を見ながら、二人の思い出を振り返る。
良い事も悪い事も、二人で分かち合い乗り越えてきた。
それなのに、何もしてやれない……
昔望んでいたプロポーズをする?そんな事をして妻は喜ぶのか?何も考えずゆっくりさせてやった方がいいんじゃないか?
今更ながら自問自答しているうちに私も眠りに着いてしまった。
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