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それから自分の病気が完治出来ない難病であることを結唯は告げられた。
(そんな……)
30歳を目前に訪れた不治の病の宣告に、結唯は目の前が真っ暗になっていく。しかし悲観してばかりもいられなかった。
結唯は子供が好きだった。だから教師と言う職も辞めたくはなかった。医者からは病気の進行を遅らせる薬物療法を勧められた。結唯に選択の余地はない。告げられるままの治療を行いながら、自分が不治の病であることを周囲に隠しながら入院から日常へと戻っていくのだった。
貧血に発熱、感染症予防など、身体はつらく、担任をもつことは叶わなくなってしまった結唯だったが、それでも子供たちの側に居られるのなら、と教師の職を辞することはしなかった。
「松本先生、大丈夫ですか」
そんな結唯を心配してくれたのは同僚の西田悠真だった。悠真は結唯が不治の病だとは知らない。が、担任を外され激しい運動ができず、毎日顔色が悪い結唯の様子に気が気ではなかった。
「ありがとうございます、西田先生」
力なく微笑んだ結唯を見た悠真は、思わず結唯を抱きしめていた。
「俺じゃ、駄目ですか……」
掠れるような悠真の声に、結唯は思わず目をみはる。
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