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「先生、さようなら」
「はい、さようなら」
松本結唯は夕暮れの教室内で生徒たちを見送っていた。何人かの生徒が教室内に残る。
「先生~、今日も黒板にお絵かきしてもいい~?」
数人の生徒の懇願に、結唯は苦笑を浮かべながらも頷いた。そして下校時間が近づく。
「ほら、そろそろ下校時間だから帰りなさい」
結唯は子供たちをせっつく。子供たちは少し名残惜しそうにしながら帰り支度を進めていた。秋は日が落ちるのが早い。結唯は日が落ちる前に子供たちを家に帰り着かせたかった。
「じゃあ、先生、さようなら」
子供たちを教室から送り出した結唯は、少し暗い表情をしていた。この前の樹の言葉を思い返す。
『絶対に助けるから』
確かに彼はそう言っていた。一体何から?
不安がないわけではない。しかし待つと決めたのだ。自分は樹を信じ、日々を過ごしていくしかない。
子供たちの背中が見えなくなり、結唯は重い足取りで職員室へと向かった。そこで年長の教師に声をかけられる。
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