7人が本棚に入れています
本棚に追加
「松本先生。また子供たちに落書きをさせていたらしいじゃないですか」
「清水先生……」
結唯はこの清水陽子のことが少し苦手だった。職場にはどこにでもいる、いわゆるお局である。
「あれほど、やめなさいと言っているのに」
清水は眉間の皺を隠すことなく結唯へと詰め寄る。
「チョークだってただではないんですよ」
「すみません」
「全く。子供が可愛いだけではこの仕事は続きませんからね」
清水は言うだけ言うとその場を後にした。
「清水先生は神経質過ぎますよね」
そこへ爽やかな青年が声をかけてきた。同僚の西田悠真だ。結唯よりも数年先輩の彼は、年も近いせいか結唯を気にかけてくれていた。
「どうです?今夜食事にでも」
「ごめんなさい。今夜は……」
「そうですか」
結唯の言葉に嫌な顔一つせず、悠真はその場を後にした。沈んだ表情のまま、結唯は帰路につく。
最初のコメントを投稿しよう!