日常

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「松本先生。また子供たちに落書きをさせていたらしいじゃないですか」 「清水先生……」  結唯はこの清水陽子(しみずようこ)のことが少し苦手だった。職場にはどこにでもいる、いわゆるお局である。 「あれほど、やめなさいと言っているのに」  清水は眉間の(しわ)を隠すことなく結唯へと詰め寄る。 「チョークだってただではないんですよ」 「すみません」 「全く。子供が可愛いだけではこの仕事は続きませんからね」  清水は言うだけ言うとその場を後にした。 「清水先生は神経質過ぎますよね」  そこへ爽やかな青年が声をかけてきた。同僚の西田悠真(にしだゆうま)だ。結唯よりも数年先輩の彼は、年も近いせいか結唯を気にかけてくれていた。 「どうです?今夜食事にでも」 「ごめんなさい。今夜は……」 「そうですか」  結唯の言葉に嫌な顔一つせず、悠真はその場を後にした。沈んだ表情のまま、結唯は帰路につく。
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