知らないところで灯る光

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知らないところで灯る光

「ネット小説? 読めるよ」  盲特別支援学校に通っている芹菜の言葉に私は驚いた。 「え、読めるの?」 「読める読める、超余裕」  芹菜は強度の弱視である。  白杖も使っているし、弱視以外の障害もあるはずだ。  余裕とまで言われてしまい、その理由を考えてみた。 「どうしてるの? もしかして、点字に印字するサービスがあるとか?」 「ん~、そんな手間をかけなくてもすぐ読めるよ。読み上げソフトがあるから」 「それって高いの?」  読み上げソフトというのを聞いたことが無いので、つい値段が気になってしまう。  すると、芹菜は首を振った。 「ううん。無料の音声読み上げソフトもあるし、それに最近、ブラウザによってはブラウザについてるものもあるから、すぐ使えるよ」 「へ~」 「だから、ネットに載ってる小説はだいたい読めるから、すごくいいんだよ! 紙の小説だと点字化してるものしか読めないからね」 「そうなんだ」  意外だなと思ったけれど、ふと芹菜の言葉の一部が気になった。 「だいたいってどういうこと?」 「ああ、画像になっている文章は読めないの」  画像になっている文章……どんなものがあったかと思って思考を巡らせて、気が付いた。 「あ、あるね。写真の上に詩が書いてあったりするのとか」 「そうそう、文章が画像に変換されてるのとかね。そういうのは読み上げソフトは読めないから私は読めないの。画像に説明文でその文章が入ってたりすると読めるんだけどねー」  そんなこともあったんだと初めて知る話に感心していると、芹菜がニコッと笑った。 「でも、大丈夫。ネット小説のサイトはどこも読めるから。そういうわけで……莉々」 「ん?」 「私の好きな年下坊ちゃん×年上執事もの書いてー!」 「え、いや、私はBLは……」 「BLじゃなくてもいいから! そういう組み合わせのを読みたいー!」  芹菜が強くねだってくる。  困ったなと思いながら、ネット小説が目の悪い人たちの楽しみになっているなら、書いていて良かったと心の片隅で光が灯った。
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