爺ちゃんの一眼レフ

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 景色を眺める志穂の写真を撮っている内に、僕は旅館のパンフレットを撮影するプロカメラマンになった気がして、ちょっと楽しくなって来たのでスマホのアプリで露出を測る。  シャッタースピードは1/60秒で適正露出と出た。僕はフィルムを巻き上げて一先ずは露出計を信じて1/60秒で一枚シャッターを切った。カシャンと古いカメラ独特のシャッター音が響く。念の為一段明るい1/30秒でもう一枚だけシャッターを切った。  背景が明るく手前に人が居るような構図では露出計の読み取り結果が、より面積の広い背景の明るさに引っ張られて手前の人が暗くなってしまうことがある。まぁストロボが使えればいいのだが、残念な事に爺ちゃんの一眼レフで使えるストロボを持っていない。実は爺ちゃんの荷物を整理していた時にストロボも一緒に出て来たのだが、ストロボは壊れていて使えなかった。  僕がすっかりカメラマンになった気分でロビーにある机と椅子をファインダーの手前に入れて前ボケを作ったり、窓際ギリギリに三脚を立てて景色を眺める志穂の横顔を撮ったりして遊んでいると、野口さんがやって来た。
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