爺ちゃんの一眼レフ

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 爺ちゃんの告別式が終わり、久しぶりに我が家の茶の間に大勢の親戚が集まっている。いつもなら一人掛けのソファーに座っているはずの爺ちゃんだけがそこには居ない。  やっと葬式が一通り終わって皆一息ついている。居間のテーブルでは叔父さん達が誰は老けた、誰は元気そうだのと葬儀に来ていた来賓の人達の話をしながらお菓子を食べている。女性陣は茶の間のテーブルでお茶を飲みながら昔の写真を見て思い出話をしている。昔の話なので、所々知らない人の名前が出て来てよく分からないところもあるが、僕は方肘をついて何となくその話を聞いていた。  しばらくすると爺ちゃんの荷物整理が始まった。僕は手伝うでもなく後ろでボーっと見ていた。印鑑とか通帳とか大事な物から、眼鏡や時計といった身の回りの物、今では紙屑になってしまった大昔の証券なんかも出てきた。すると父が僕を呼んだ。 「おい、龍次このカメラ使うか?」  それは古いフィルムの一眼レフカメラだった。写真は好きだがデジタルカメラ世代の僕には使い方がイマイチ分からなかった。でも今のデジタルカメラとは違う、がっしりとした金属のボディでとても重厚感があってカッコよく見えた。カメラと一緒にレンズも三つ出て来た。後から分かった事だが、このカメラは露出計(ろしゅつけい)がついていない、どちらかと言えば上級者向けの機種だった。
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