爺ちゃんの一眼レフ

　それからまたしばらくして、今度は母から古いフィルムを何本か貰った。倉庫を掃除していたら出て来たんだとか。しかし未開封とは言え三十年以上も前のフィルムだ、ちゃんと撮れるのだろうか。母は「どうせ使えなくてもただ捨てるだけだから」と言った。僕は一先ずフィルムで撮るものも無かったので、貰ったフィルムを棚にしまった。
　しばらくはその存在すら忘れていたのだが、彼女の志穂と旅行に行くことになって、せっかくなのでデジタルだけじゃなくフィルムカメラも持って行こうと思い、ふと母から貰ったフィルムの事を思い出した。僕は棚からフィルムを取り出して爺ちゃんの一眼レフに入れた。
　フィルムをカメラに入れる時というのは何度やっても若干不安がよぎる。フィルムを入れる時は、カメラの中にある軸にフィルムの端を挟んで、フィルムの上下両端についている、小さな四角い穴に軸の突起が入る様にしながら取り付ける。その後フィルムを一、二回巻き上げるのだが、この時に一枚分くらい無駄に巻き上げているんじゃないかと不安になるのだ。結局失敗した事は一度も無いのだけれど。