爺ちゃんの一眼レフ

7/26

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
 旅館に着くと六十位だろうか、旅館の経営者らしい野口さんという男性が丁寧に迎えてくれた。玄関の大きな木の看板には旅館の名前が力強い字体で書かれている。ロビーがあってその奥は大きな窓ガラスになっており、山から下を見下ろせる様になっていた。志穂が景色を眺めている間にチェックインを済ませる。 「夕食は十八時三十分からになりまして、お部屋にお持ちし致します。大浴場は一階でこの廊下の奥になります」  野口さんから色々と旅館の説明を受けてから部屋の鍵を貰った。今では何となく懐かしい細長い四角いプラスチックの棒に201と部屋の番号が書いてある、あのキーホルダー付きの鍵だ。  ロビーから部屋に向かうのとは反対側に小さな売店がある。志穂が景色を眺め出すと人一倍どころか人五倍程長いので、僕はその間に売店を覗いて見た。  表にはご当地キャラだろうか、見たことの無いユルキャラのキーホルダーやストラップが、クルクル回る例の方式で陳列されている。その奥には小腹が空いた客向けにカップ麺やらお菓子があって、さらに奥にはお土産用にもう少し高級な和菓子やらゼリーが並んでいる。  売店のレジには誰もおらず、白いボードが置いてあって「御用の方はロビーまでお申しつけ下さい」と書いてある。あらかた商品も見終わり、今買わないといけない物も無かったので窓の方を見ると、志穂はまだ景色を眺めていた。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加