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「実際、どう思う?」
明日が早いからと一足先に店を出た広輝を見送った私と西野君は、二人で飲み直していた。
広輝には言わなかったが、彼が見せてくれた中学時代の彼女と愛結の二人は、確かに似ていた。顔の造作というよりも、醸し出す雰囲気が似ていたのだ。カメラを見つめる視線の温度のようなものが。
でもそんな非科学的な見解は、酔いのせいか若しくは広輝の話を聞いての刷り込みかもしれないと感じて、私は改めて西野君に尋ねてみた。
「いやぁ、分かんないっすよ。でも確かに、大学入った頃のあいつがイイなって言う女は、結構大人びたハーフっぽい顔立ちの美女が多かったんですよ。こいつ結構面食いだなぁって思っていて。だから愛結ちゃんと付き合いだした当初は、好みが変わったのかって感じていたんですけど……。変わりましたよねホント、最近の愛結ちゃん」
いつもひょうきんものの西野君が、重い口調で呟く。
「あと、似ていると言えば、思い出したことがあるんですけど」
「なに?」
「あいつの母ちゃんとばあちゃん、めちゃくちゃそっくりだったんですよね。話し聞いて納得しました。遠縁に当たる人たちだったんですね」
大学時代、まだ広輝と愛結が付き合いはじめる前に、西野君は広輝と一緒に、広輝の父親の実家を訪れたことがあるという。
「仲間と行ったキャンプの帰りに立ち寄ったんですけど、広輝の母ちゃんとばあちゃんとひいばあちゃんまでいて」
マトリョーシカかよ、と突っ込みを入れたくなるほどに三人の容姿は似ていたそうだ。
「観音様というか菩薩的な、母性溢れるおっかさんって感じの人たちで。ずっとにこにこしていて、あの人たちが泣き叫んだり怒り狂ったりする姿なんて、想像がつかないんですけどね」
悪しき力から、広輝たち一族を護るために嫁いできたという彼女たちは、菩薩に似ているのか。
ヴェネチアン・マスクの顔を持つ女たちと、仏の顔を持つ女たち。これからもずっと、広輝の一族の男たちは彼女たちに翻弄され、そして護られて生きていくのだろうか。
広輝の話を聞いた後では、もう二人の関係が修復されるとは到底思えなかった。ダイビングツアーにも仲間との飲み会にも、その後二人が顔を見せることはなくなったと人づてに聞いた。
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