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「どうしようもなく、好きなんだ」
彼女にそう吐き捨てながら、もうすぐ明ける空を見る。
何も言わずについてくる彼女のヒールの音と、涼しい風の音だけが耳に響いた。
「…どうして?」
無機質な、ただの音とも取れる声で、彼女は喋った。
あぁもう…違う、そうじゃない。
「もっと感情込めて喋れないわけ!?」
振り返ると、それに合わせて彼女も止まる。
光のない目は、まるで機械のよう…。
――…いや、機械。機械だ。彼女はただのロボット。
「わかってるさ…無理な事ぐらい」
憧れ、焦がれ、そしてフラれても尚、諦めきれなかった彼女。
機械でいい、無機質でも構わないと決めたのは、僕じゃないか。
彼女からのアクションは無い。僕が何か喋りかけない限り、話しかけてくる事もない。
また前を向いて歩きだした。こんなに惨めな気持ちになるなら、こんな機械なんか…。
「ごめんなさい…」
ハッとして彼女を見ると、泣きそうな顔でこちらを見ている。
いや、これは自分の願望かもしれない。
でも声はどこか、申し訳なさそうな、そんな声だった。絶対に。
「…俺のわがままなんだ、全部、全部」
彼女に近づいて、小さく笑いかける。
上手く笑えているだろうか?
わかるはずないモノに話しかけて、一体何がしたいんだろう、俺は。
「感情の行き場がないんだ、どうしようもないんだ…」
そう言いながら、彼女を抱きしめた。
ただ、どんなに強く抱きしめても、彼女から抱きしめ返される事はなかった。
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