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「お父さんが私のことを自慢してたって」
「そりゃそうだよなー。俺だって娘が可愛かったら自慢したくなるもんな」
綾子は移りゆく写真を眺めた。小学校の入学式の写真、修学旅行、中学での部活、高校で友達と、そして新郎との写真。
考えてみれば史郎と写真を撮ったことがないな、そう思った。史郎はいつもカメラを片手に綾子ばかり撮っていて、自分との写真を撮ることをしなかった。
入学式の写真も卒業式の写真も、綾子と母親が写っている物しかない。思い出の写真のどこにも史郎はいない。
「うちのお父さん、写真撮ってばかりで自分が写ってるのないんだよね」
「そうなんだ」
いつも周りを優先する人だった。綾子が高校生の時、史郎はリストラにあった。生活は苦しくなり、綾子もバイトをして家計を支えた。
思春期だったこともあり、遊びたくても遊べないストレスは自然と父親へ向かった。
「お父さんが仕事出来ないからリストラなんかされるのよ!!」
「綾子!!なんてこと言うの、お父さんに謝りなさい!!」
「いいんだ」
そう言って史郎は力なく笑う。
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