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あたしは絶望した。
お父さんがいなくなって、ただでさえお母さんは混乱している。あたしは尚更「いじめ」を親に打ち明けることも出来なくなっていた。
きっとお母さんに打ち明けたところでお母さんはあたしに興味なんてないだろうけど。
「はあ…」
帰り道。あたしは通学路で深い深い溜め息をこぼした。冬の息はあたしの頭の中のように真っ白だった。
その時だった。
__ドン!
急に激しい音と衝撃がはしった。目の前がチカチカする。何か起こったのか分からなかったがあたしはやっぱりなぜか冷静だった。
ーじゃあ、まのんちゃんも死ねばいいじゃん。
ーこの教室にあんたの居場所はないでしょ。
ーもうその顔見たくないし。
今日のあの子の言葉が頭の中で目まぐるしく回っている。
ああ、あたしはこのまま死ぬんだな。
神様でさえもあたしを要らないと判断したんだ。あの教室にあたしは必要ないと。
あたしが死んだらどんなるんだろう。
「あいつ本当に死んだよ」
「まじ?やった、もうあの顔見なくていいんだね」
そうやってクラスメイトが笑う事が手にとるように分かった。
きっとお母さんもあたしが死んでもなんとも思わないだろう。
想像するだけで胸が痛んだ。
ああ、もっとこの人生で楽しい思い出を作りたかったな__。
頭がぼやぼやする。不思議な気持ちで目をつぶっているとどこかから声が聞こえた。
「この子ならきっとうまくやってくれるよ」
「でもまだこんなに幼いのに」
「大丈夫だ。この子ならきっと。この子はとても強いんだ。」
「…そうね。あなたがそういうのなら。この子は強いわ。」
「それにこの子にぴったりな会わせたい少女がいるんだ。その子は__」
なに?だれ?ここはどこ?
この人たちはあたしの事を言っているの?
そんなたくさんの疑問を頭に浮かべたままゆっくりと目を開けるとなにもない白い部屋にあたしは寝ていた。
なんだろう、ここ。
病院‥じゃない。
あたしはあの時ートラックにはねられた時ーのことをはっきりと覚えている。
そうか…。あたし、あの時死んだのか。
それならここは天国…?
あたしは恐る恐る隣に目をやった。
そこにはさっきの声の主と思われる男の人と女の人が立っていた。
「あら。目が覚めたのね。良かったわ」
あたしに気づいた女の人がにこりと笑った。
「あのどういうことですか」
気づいたらそう尋ねていた。
雲の上のような世界で死んだお父さんと会えるようなことを想像していたけど実際はそのイメージとは随分かけ離れていた。
この男の人とこの女の人とはべつに免疫があるわけではない。
会ったことも喋ったこともない。
いや、わたしが忘れているだけで本当はどこかで会ったことがあるのかもしれない。
でもやっぱり思い出せない。
この人たちは誰なんだろう。
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