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8.与野恭平 Ⅱ
21時、集合場所に着くと既にみんな集まっていた。俺はひなのと待ち合わせをして一緒に向かい、みんなと合流する。
「お、みんな久しぶり。しばらく見ない間に大きくなったな。」
浩司さんは英司の5つ上のお兄さんだ。今は東京の医大で実家の診療所を継ぐために勉強をしている。俺達はみんな小さい頃によく遊んでもらっていたし、浩司さんが大好きだった。
「兄貴、親戚のおじさんじゃないんだから。」
普段大人びて見える英司も、浩司さんの前では弟の顔になる。それがなんだか新鮮だった。
「さて、それじゃ行きますか。」
俺達は道端に停車していたバンに乗り込む。
英司は助手席に、俺達は後部座席にそれぞれ座った。
夜の道をまっすぐにバンは走っていった。
*****
車を降りてすぐ、目に飛び込んできたのは辺り一面の銀世界と今にも零れ落ちてきそうな幾千もの星々だった。
あまりの光景に圧倒され、全員思わず言葉をなくす。
「いい感じじゃん。俺は車にいるから、英司達は好きにしてていいよ。風邪だけは引かんように。」
浩司さんはそれだけ言い残して車に戻った。
俺達はしばらく星空を見上げ、感嘆の声を漏らしていた。
「流星群ってことはこのあとこれが流れるわけだろ?ここに落っこちてきたりしねぇの?」
口をぽかんとあけて上を見上げる俺に英司が笑った。
「まさか。どんな確率だよ。まあそう思うのもわかるけどな。」
「いや、わかんねぇよ。」
「なんで大悟は俺にだけそう手厳しいわけ?」
みんなが笑う。楽しそうに。
幸せだった。
だからこそ、俺から言うべきなんだろうなと思った。
英司はなにも言わなかったけど、今日はきっとそのための機会なんだろうなとは思っていた。
なるべく重くならないように。
みんなが笑っていられるように。
「こんだけ沢山の星があるなら、願い事の一つでも叶えてくれたりするのかね。」
言葉を発すると同時に、俺の目からは涙が溢れた。
みんなの表情が凍りつくのを感じる。
なんでこう、上手くいかないかなー。
ていうかさ、なんで死んでんのに涙なんか出てくるかなー。
「…なんだよ、これじゃ台無しじゃんか。さいあく。」
天を仰げば星の光が眩しくて、俺はなす術もなく「ちくしょう」と呟いた。
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