6.大石英司 Ⅰ

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放課後になるとすぐ大悟が姿を現した。 「英司いるか?」 「いるよ、じゃあ帰ろうか。」 俺は教室に残る翔子にまた明日と手を振って大悟のもとに行った。 「悪いな急に。翔子はいいのか?」 「そんな小学生じゃないんだから、俺達だって四六時中一緒にいるわけじゃないんだぜ?」 「そりゃそうか。」 夏には青々と空に向かって手を伸ばしていた街路樹も、今はすっかり赤や黄色に変わっていた。 最初に口を開いたのは大悟だった。 「あの肝試しの時のスケッチブックの持ち主、二年の奴だったんだって。ひなのから話を聞いたんだけど、ちょっとムカつく野郎でさ、俺殴りに行こうかと思った。」 「お前が言うと洒落にならんから。」 「だってさ…」 大悟はひなのから聞いた事の顛末を話してくれた。それを聞いて俺もはらわたの煮え繰り返る思いだった。 しかし大悟はこうも続けた。 「でもさ、そいつの言うことが全部間違っているのかって言ったら、そういうわけでもないんだよな。」 「というと?」 「このままじゃいけないってこと。俺達もずっとこのままってわけにはさ、いかねぇじゃん。」 制服の上に着たコートのポケットに両手を突っ込んで大悟は一点を見つめている。 「ひなの、東京に行くんだって。親の仕事の都合らしいけど。翔子も海外行くかもなんだろ?俺は卒業したら店を継ぐつもりだし、英司だってこのまま地元進学するとは言え、きっといつかはこの街を出るんだと思う。」 俺は首に巻いたマフラーに顔を埋め、大悟の言葉にそのまま耳を傾ける。 「俺ひなのから話を聞いてさ、ずっと考えてたんだ。今俺達がしてることって本当に正しいのかって。恭平が死んじまった事実をなかったことみたいにして、なんとなく毎日を過ごして。その先に何があるかって言えば、何もない気がするんだ。変われるってことは俺達が今こうして生きてるからで、死んじまったあいつはもう、変わることすら出来ない。俺達には選択肢があって、前に進まなきゃいけない。そう思うんだ。」 「…そうだな。」 「英司、俺達は…そろそろちゃんと向き合わないとダメなんだ。俺達の為にも、あいつ自身のためにも。だからさ」 真実をちゃんと話そう 大悟はそう言った。
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