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ケースを開くと、ダークグレーのスポンジクッションに、赤い木が使われているレバーアクション・ライフルが眠っていた。
米国製のウィンチェスターM94。銃に詳しくなくとも、オカルトやホラーが好きなら聞いた事があるかもしれない。
西部劇では主役を飾る連発式ライフル銃だ。民間人、自警団、軍隊に使われた事で莫大な利益を築いたが開発創業者の一家は夫人を残して他界した。
夫人は亡くなった夫や子供と交信を試みる為に霊能力者を訪ねたが、会社の造った銃に殺された人達の霊が夫達を苦しめていると伝えた。そして、家族を救うには銃の売買で得た金で霊が永眠と安住する家を造る他無いと言われ、夫人が天に旅立つまで不可思議な増築が絶え間なく続けられた屋敷が遺された。
それが、ウィンチェスター・ミステリーハウスだ。
この話を聞くと、ウィンチェスター社は呪われた銃器会社だと思えるだろう。しかし、意外と間違えられているが、当時のウィンチェスター・ライフルに使われていた弾は、コルト回転式拳銃用だ。
現代からすれば、遠距離射撃のライフルに拳銃弾を使うのはおかしいと思えるが、当時は銃身が長ければライフルとして扱うのが普通だった。
だから、悪の根源となるなら弾と共に拳銃が先に開発されていたコルト社の方に呪いがかかるはずなのにそれは一切聞かない。よって、夫人は霊感商法に騙されたとも思える。第一、後の時代の銃や兵器の開発者は悪霊に悩まされた話なんかない。悪霊より、生きた人間の方が魔物だろうか?
もし、銃の呪いが存在するのならウィンチェスター社は弾薬部門を残して倒産。コルト社も破産申請をした事は記憶に新しい。
しかし、これから彼が相手にするのは人間でも悪霊でもない。
生きているかも死んでいるかもわからない、歩く死者=ゾンビだ。
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