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「楽しい!」
カメラに向かってそう言った女性は30代前半くらいに見えた。顔にはモザイクがかかり音声は加工されている。女性はガウンを着ており高級そうな白いソファーに座っている。センターテーブルの上にはワインボトルとグラスが二つ。そして、皿の上に食べかけのホールケーキがあった。
「そう言ってもらえるならよかったよ」
撮影者の男性がそう言うと、女性は急に耳を塞ぎながら俯いて何かを叫んだ。何と言っているのかは音が割れてしまって上手く聞き取れなかった。撮影者の男性は笑って急にどうしたのと言った。すると、女性はソファーから立ち上がり、両手をまっすぐ下ろしてこちらを見た。撮影者の男性は笑いながら大丈夫かと言った。女性は撮影者の男性の言葉には答えず、真っ直ぐに窓の方へと向かって歩いて行き、窓を開けてベランダに出た。そして、ベランダの柵に手を掛けてその上にピョンと飛び乗るように座った。背景は暗くて何も見えないが、男性の慌て様からしてそこが少なくとも1階ではないことがわかった。「なにしてんだよ!危ないって!」
そして、女性はそのまま後ろに倒れた。その途中でカメラは投げ捨てられ画面が乱れたところでスタジオの映像に切り替わった。
「大変ショッキングな映像でしたが、先週から拡大を続けているUウイルスに感染すると、このような異常行動を取ってしまうことがあるようです。Uウイルスの感染ルートもまだ正確には判明していないとのことです。大津さん、関東で感染拡大を続けているこのUウイルスですが、対策としてはどのようなことが考えられるでしょうか」
若い男性のアナウンサーは大津というスーツを着た年配の男性に向かって聞いた。机の前に置いてある名札には『保健衛生協会 副会長 大津雅彦』と書いてある。
「Uウイスルの感染ルートがまだ特定できていないということは脅威です。ただ、Uウイスルに感染してもこれほどの異常行動を起こすケースは稀であり、このようなケースはまだ、数件しか見つかっていません。一般的な症状としては、著しく情緒が不安定になったり、話が噛み合わなくなったりする程度のことです。ですので、必要以上に心配する必要はないと思います。Uウイスルの感染による症状は神経の異常な高ぶりが主なものですので、それを一定期間抑える薬を投与すれば一週間もすれば自然治癒します」
ここ数日はずっとこのニュースが流れている。5日前に東京でUウイルス感染者が見つかり、そこから徐々に関東圏へと広まっているようだ。僕はテレビのスイッチを切って恵美にメールを送った。
『おはよう。今日どうする?』
すぐに返信が入った。
『おはよー!とりあえず昼頃直樹くんちに着くように向かうね!』
その文面の後にゆるいイラストの猫が敬礼をしているスタンプが送られてきた。
僕は『Uウイスルやばそうやな』と送ってみた。またすぐに返信があった。
『京都市は寒暖差が激しいからUウイルスが勝手に死んでくれるらしいよ』
恵美は普段から何か世間を騒がせるニュースがあるとそのことに関するネット上の掲示板を読み漁るタイプだったので、その情報もまたネット上のどこかで読んだのだろうと思った。
『だったらええけど。気をつけて来てな』
恵美は正午を少し回った頃に到着した。僕が玄関の扉を開けると恵美はすぐに興奮したように話し出した。
「なんか異常行動してる人かなりいるっぽいよ」
「Uウイルスのやつ?テレビでは感染してもやばい異常行動する人は少ないって言ってたけど」
「でもツイッターではすごくいっぱいUウイルスのやばめの異常行動が上がってるよ。ほら」
恵美のスマホの画面を見ると確かに異常行動と見られるような写真や動画が大量に上がっていた。木を殴り続ける青年。誰もいない空間に向かって怒鳴り続けるおばさん。街中にある橋の上からやっほーと叫び続けるおじさん。
「めっちゃいるでしょ」
「ほんまやな。ここに来るまでには変な人とか見いひんかった?」
「特にはいなかったかなー。でも、なんか今朝うちの近所で言い争いしてる人の声は聞いた」
「そっか。まあ今は日本中ピリピリしてるからな」
「あ!そういえば、今日直樹くんち来る前にドラッグストア行こうとしたんだけど、駐車場がいっぱいで外にも車が並んでたから諦めたの。もしかしたら、みんな大混乱に備えて保存食とか買いまくってるのかもしれないよ。直樹くんちは保存食とか水とか置いてる?」
「冷凍食品は結構あるけど、水はないかなあ。でも感染が広まっても水道は使えるんちゃう?」
「わかんないよー?浄水場の人が全員感染して異常行動起こしたらもう水道も使えなくなるかもしれないじゃん。買っといたほうがいいよ」
そう言われて僕はいつも使っているネット通販サイトでミネラルウオーターのペットボトルを検索した。しばらく探したが、もう既にかなり割高なものしか残っていないようだった。
僕たちは車で丘の上にある『サンシャイン』という名前のレストランに向かった。このレストランはディナーの値段はそれなりに高いのだが、ランチは比較的良心的な値段で提供してくれているので、僕たちは時々ここでランチを食べた。
「ひと少ないね」
『サンシャイン』の中に入ると、恵美はなにか忘れ物に気づいた時のような顔をしてそう言った。いつもはある程度混雑しているのだが、今日は僕らの他には2組しか客がいなかった。僕らは丘からの景色が一望できる見晴らしの良い窓際の席へと案内された。僕はハンバーグのランチセット、恵美は茶美豚のステーキのランチセットを頼んだ。外の景色を見ていると、恵美は看護師の同僚の恋愛話を始めた。その話を聞いているうちに、ウエイターがランチセットのサラダを運んできた。僕は恵美の同僚の恋愛話を聞きながらも、Uウイルスと異常行動のことを考えていた。同僚の恋愛話が一段落して沈黙が流れた。
「Uウイルスってね、もし普段の行動が異常な人だったら、感染しても誰にも気づいてもらえないんじゃないかな?」
まるでついさっきまでその話をしていたかのような会話の切り出し方で恵美は喋った。
「いや、さすがに気づくやろ。マンションから落ちるくらいの異常行動やったら」
「でもそこまでの異常行動は稀って直樹くんも言ってたじゃん。大半の人は急に訳のわからないこと言って怒り出すとかそんな感じのことらしいから、それだったとしたら普段からそんな感じの人はなかなか感染したって周りから気づいてもらえないんじゃない?」
「確かにそうかもな」
「でしょ。だからね、実はね、もう既に日本中にUウイスルは広まってるのかもしれないよ。もしかしたら直樹くんも感染してるのかもしれない」
「えー、俺が?異常行動とかしてた?」
「それはわかんない。直樹くんは普段から行動が変だから」
そのタイミングでウエイターが来て食べ終わったサラダの皿を片付け出したので、そこでその会話は終わった。ウエイターはハンバーグと茶美豚のステーキとそれぞれのセットについてくるライスとスープをテーブルに置いた。恵美は幸せそうに美味しそうと言ってそれをスマホのカメラで撮った。
僕はハンバーグの端を一口大サイズにナイフで切った。すると、中から肉汁が溢れてデミグラソースと混ざった。切ったハンバーグの断面に肉汁の混ざったデミグラスソースをつけて口に入れた。ハンバーグの外側の硬く弾力がある部分と中の柔らかい肉の部分が噛む度に肉汁を出しながら口の中で混ざり合った。ハンバーグを堪能していると、急にレストランの厨房の方で大量の食器が割れる音がした。とても大きな音だったので、店内の客とウエイターが一斉に厨房の方を見た。ウエイターは店内の客に対して謝って厨房の方へと入っていった。
「びっくりしたー。もしかして異常行動だったりして?」
恵美がふざけるように言ったので、僕も冗談っぽく返した。
「発症するならせめてハンバーグを食べ終わってからにし――」
女性の大きな悲鳴が厨房の中から聞こえて言葉が中断された。僕は咄嗟に立ち上がって、今この場から逃げるべきか考えた。恵美の方を見るとただ驚いた様子で僕の顔を見ていた。するとすぐに厨房の方から、年配のコックが出てきた。表情は穏やかだった。
「お騒がせしてすみません。従業員が少し手を切ってしまっただけです。驚かせてしまって申し訳ありません。このままお食事をお楽しみください」
年配のコックが落ち着いた様子でそう言ったので、僕たちはなんとか落ち着いて食事を続けることができた。
「びっくりしたな。ついに京都にも出たんかと思った」
「直樹くんちょっと敏感になりすぎなんじゃない。きっと大丈夫だよ」
帰り道、車の助手席で恵美は熱心にスマホを触っていた。
「何してんの?」
「ん~、Uウイスルについて調べている」
先程は僕に敏感になり過ぎと言っておきながら、恵美もやはり心配しているようだった。
「どんな感じ?」
「やばめの異常行動者の投稿がどんどん増えてきてる」
「それはイタズラかUウイスルに関係ないナチュラルな異常行動者の可能性もあるんちゃう?」
「そうかなー。やっぱり本当はもう関東圏だけじゃなくて全国に広まってるのかもよ?」
「京都で異常行動してる人は上がってる?」
「あるよ。これとか」
ちょうど目の前の信号が赤に変わったので、車を止めて恵美のスマホを見た。それは、ビルの三階あたりから撮られている動画だった。男が何か叫びながら道路に駐車されている車の後ろ側のガラスに向かって頭突きをしていた。顔は垂れた血で赤くなっている。5、6回頭をぶつけたところでその動画が終わっていた。
「うわ、これはやばいな」
「ここからそんなに遠くないよ」
「いよいよやな。恵美、今日はもう自分ち帰る?」
「え?帰っても私ひとりじゃん」
「じゃあこのまま俺んち向かうで」
信号が青に変わって車を発信させた。
「東京の友達はずっと家にこもってるって言ってる」
しばらくしてスマホを見つめながら恵美がそう言った。
「そっか」
「でもさー。感染者の件数って病院を受診しないとカウントされないんでしょ?異常行動している人がどうやって病院受診するの?」
「さあ。念のため水とか買い込んどこうかな」
僕たちは車で近くにあるスーパーに向かったが、スーパーの駐車場はいっぱいで道路にまで車の列ができていた。しょうがなく、車をスーパーから少し離れた邪魔にならない脇道に止め、保存食と水をスーパーに徒歩で買いに行くことにした。スーパーの中が混雑していそうだったので、恵美には車の中で待ってもらうことにした。
スーパーの中に入ると、そこは予想していた以上の人でごった返していた。店員が、水はレジで一人2リットルまで販売していますと大きい声でアナウンスしていた。店内をくまなく探したが食料品はほとんど残されていなかった。仕方なく売れ残っていたトマト缶3個を持ってレジに並んた。レジには長い列が出来ており、結局、車に戻るまでには1時間程かかってしまった。
「遅くなってごめんな」
恵美はそれに対してなにも答えなかった。
「水とトマト缶しか買えなかったわ」
恵美は黙って下を向いている。
「どした?」
その後も何度か声を掛けたが、恵美は小さく頷いたりするだけでほとんど返事をしなかった。
自宅のアパートの駐車場に車を停めて、恵美を連れて部屋へ入った。恵美をソファーに座らせてから、湯を沸かして煎茶を入れてあげた。恵美はゆっくりとそれを飲んだ。僕はテレビをつけて各チャンネルの放送内容を確認した。BS放送以外はどのチャンネルもUウイスルのことを取り扱っているようだった。朝テレビで喋っていた保健衛生協会の大津が出ている番組があったので、そこにチャンネルを合わせた。テレビに集中しようとした時、恵美が急に喋りだした。
「私見ちゃったの」
恵美はテーブルの上の空間を見つめながら言った。
「何を?」
僕はできるだけ落ち着いた声で言った。
「車で待ってる時に、少し離れたところにある電柱に小学4年生くらいの子供が登ってるのが見えたの。それでね、私ふっとそのことに気づいて、びっくりして、ずっとその子のこと見てたの。そしたらね、その子がね、私の方を見てきて目が合ったの、そしたら急にね」
恵美はそこまで言って黙った。テレビではUウイルスのことについて、保健衛生協会の大津が何か喋りだした。
「Uウイスルに感染したからといって、皆がただちに生命に危険を及ぼすような異常行動を取るわけではなく、大半は急に怒り出したりとか情緒が不安定になって辻褄が合わないことを喋りだしたりするだけです。ですので、感染しても特に大きな問題はありません。感染力もインフルエンザより弱いものです。ただ、心配するべきは、Uウイスルによる感染は生命に危険を及ぼすような異常行動の十分条件ではないが必要条件にはなっているということです。Uウイスルの感染と、それとは別の何かの要因が重なって初めて生命に危険を及ぼすような異常行動になるわけです。ですので、Uウイスルに感染したと思われるような症状が少しでも現れれば、すぐに病院を受診することをお勧めします。感染したと思われるような症状とは、つまり、著しく情緒が不安定になったり、極端に話が噛み合わなくなったりするということです。このようなことを周りから指摘された場合は、すぐに病院を受診することです。Uウイスルの症状を抑える薬はどこの病院にもあるものですし、早く感染に気づいて薬さえ飲めば生命に危険を及ぼすような異常行動を取ってしまうこともないのです」
大津は時々ジェスチャーを交えながら、カメラに向かって熱心に話した。それに対して年配の女性アナウンサーが喋りだした。
「しかし、大津さん、Uウイスルに感染しただけでは情緒が不安定になるだけで、ただちに生命に危険を及ぼすような異常行動をとるわけではないことはわかりましたが、それに重なると生命に危険を及ぼすような異常行動を取ってしまうという、その重なってはいけない要因とは、具体的にどんなものなのでしょうか」
年配の女性アナウンサーは眉間に皺を寄せて大津に質問した。
「生命に危険を及ぼすような異常行動を起こす要因が何であるのかはまだはっきりとはわかっていません。ただ、各地で狭い地域に固まって生命に危険を及ぼすような異常行動者と不審死が発生していることから、生命に危険を及ぼすような異常行動の要因の一つが、そのような異常行動を取っているものとのなんらかの接触であるという可能性が高いと私は考えています」
「私分かった」
恵美はまだテーブルの上の空間の一点を見つめている。
「何が?」
「どうしたら本当の異常行動になるのか」
「本当のって生命に危険を及ぼすようなってこと?」
「子供がね、電柱の上から私をじっと見てきたの。そのときね、私、変な感覚になったの。体中に鳥肌が立ってね、何か絶望したような感覚になったの。そしたら、その後は体中の力が抜けて何も考えられなくなったの。きっとこれが本当の異常行動になるきっかけのやつだと思う」
「そうやったとしても、恵美はまだUウイスルに感染してないやんか」
「そんなのわかんないでしょ。今だってUウイルスのせいで情緒不安定になってるのかもしれないじゃん。きっと私はこれから本当の異常行動を起こすんだわ」と恵美はこちらを向いてピラニアのように目を見開いて喋った。
「その子はただ電柱に登ってただけの人かもしれんやん。別にUウイルスに感染して生命に危険を及ぼすような異常行動をしてる人やとは限らへんやんか」
「じゃあなんでその子は電柱から落ちたの?」
僕は言葉が出てこなかった。恵美は電柱から子供が落ちる瞬間を見たのだ。
「これから私は本当の異常行動を起こすことになるの。もうすでにUウイルスの症状だって出てるし」
恵美は、今度は顔を歪めて今にも泣き出しそうな顔で喋った。
「私ね、いつも考えちゃうの。何か小さな地震が起きたときとか、このまま地震が止まらずに世界が終わったらいいのにって。私はどっかでもう死んでいいって思ってるんだと思う。だから全然平気よ。だっていくら頑張って生きていてもずっと続く幸せなんて手に入んないじゃん。今この瞬間は直樹くんと一緒にいれて幸せだけど、でも、直樹くんって彼女いるじゃん。私はどう頑張っても二番目なんでしょ。私はずっとそう。いっつもだめ。好きな人の一番にもなれない。だから私はこのまま本当の異常行動者になってもなんにも悲しくない。だって、そうなったらもう何も考えなくていいから。私は本当の異常行動をするの。そして私と目を合わせた人がみんな本当の異常行動者になって、それが世界中に広まって世界が本当の異常行動者だらけになるの。みんなが本当の異常行動をする世界ならもうそれが正常でしょ。そうしたらみんな一緒だから、みんな一緒なら誰も不幸じゃないじゃん。直樹くん、私はもう感染してて異常行動してるんだと思う?」
僕は何も答えられなかった。
「私いつも言ってるよね。直樹くんとずっと一緒に居たいって。でもそれに対していつもちゃんと答えてくれないよね」
「今その話しなくても」
「いつもそうやってごまかして!もう嫌よ。私はもう感染してるの。そしてすぐにとんでもない異常行動者になるの!きっともうすぐに京都も本当の異常行動者で溢れてめちゃくちゃになるんだわ。もうすべてが終わるの」
そう言って恵美は立ち上がった。そして、伏せられていた僕の本命の彼女とのツーショット写真が入った写真立てを手に持って、床に叩きつけた。写真立てはガシャンと大きな音を立てて割れた。そして今度は液晶テレビをテレビ台から落とした。その際にテレビの線が抜けてテレビから音が消えた。
「もう嫌。もう嫌」
恵美はそう言ってその場に崩れ落ちるように座り込んで泣き出した。
恵美はUウイスルに感染して異常行動をしている。そう思いたかった。部屋には恵美の嗚咽混じりの泣き声だけが響いた。
その時、静かになった部屋の外から拡声器を使ったアナウンスが小さく聞こえてきた。
「Uウイルスバスターペンライト~。Uウイルスバスターペンライト~」
石焼き芋の販売のように誰かが拡声器で喋っている。
「いかがですか。いかがですか。このUウイルスバスターペンライトの光をただ10秒間見つめれば、たちまちUウイルスの症状はなくなります。たった十秒光を見つめるだけでいい。今ならこれを1本1万円で販売しています。今だけ1本1万円です。Uウイルスバスターペンライト~。Uウイルスバスターペンライト~」
その声はゆっくりと遠ざかって行くように聞こえた。
僕は部屋を飛び出し、アナウンスの聞こえる方へと走った。しばらくするとアナウンスをしている軽トラックを見つけた。僕はUウイルスバスターペンライトを1万円で買った。黒い普通のペンライトだった。ただ、光る方とは反対側の先に『U』というシールが貼られていた。
僕は急いで部屋まで戻った。部屋の中はさっきより荒れており、本棚も倒れていた。僕はUウイルスバスターペンライトの光をつけて恵美に言った。
「恵美!これ見て、これ見たらUウイルスの感染が解けるんやって、さっきのやつ聞いてたやろ?」
恵美はぼーっとペンライトの光を見つめた。そして、僕は言った。
「恵美、心配させてごめんな。絶対に恵美との縁を切ったりはせえへんから。ずっと一緒やから」
僕はそう言って恵美を強く抱きしめた。恵美は僕に抱かれながら泣き出した。そして、治してくれてありがとうと言った。
恵美を抱きしめながらUウイルスバスターペンライトを眺めていると、側面にDAISOという文字が書かれていることに気づき、さりげなくそこを手で覆い隠した。
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