はじめての彼氏

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(てか、ダメだよ。 完全にキャパオーバー……こんな、こんな) こんなにも。 触れ合うことで幸せな気持ちになるなんて。 (私も人並みに女子だったのかぁ) タクシーの後部座席に深く座って天井を見つめた。 ドキドキする。 信じられないくらいの超特急で決まってしまった『はじめての彼氏』。 真衣香は高鳴る心臓の、その理由を、恋だと信じようと思った。 (優里に言ったら、凄い顔されそう) 信じられない! と、驚愕する優里の顔を思い浮かべて真衣香はひとり苦笑いを浮かべた。 言われてしまう自覚なら、あるにありまくるから。 けれど。 キッカケや時間や、そんなものを考え出すとキリがないから。 ただ、坪井の笑顔に、声に、手の温もりや力強さ。 それらにドキドキした真衣香自身の、あの瞬間、一瞬一瞬を信じていたいと思ったのだ。 24歳。 人生初の彼氏ができてしまった、信じられない気持ちと、輝き出した世界を瞳にうつして。 そんな夜の帰路だった。
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