極東 日本

3/64
前へ
/133ページ
次へ
 ーー極東、日本。  「大審判」の被害が最も少なかった国。国土の分割もなく、また全土に向けた施政権そのものが一度も途切れなかった稀有な国。  幸運な国だ。それ故に、現況の世界に即した問題と被害を直に被っている国でもある。  ーー設問。とある世界規模の大災害があります。大地と言わず大海と言わず大空と言わず、すべてを飲み込み滅ぼすような大災害が、時間も場所も選ばず地球の各地で起こったとします。  被害は天文学的なほど。その後に残ったのは瓦礫だったり屍だったり“何も無くなったり”と、人智を遥かに越えた有り様。しかし、おや? どうやら隣の村は、町は、そもそも国は意外と大丈夫そうだぞ?  我々はこんなにも傷付いているのに。  アリシアは、そんなブリーフィングでの言葉を思い出す。  つまる所、そんなものだ。この国以外の比較的安全であった国は、瞬く間にパンクしていった。  「大審判」により発生した莫大な数の難民問題、それらに付随する食糧問題に居住地選定のあれこれ。そして大規模な難民受け入れから起こるお決まりの治安悪化と国土の無秩序化。  昔から、良くある話である。しかし、極東に鎮座するここは至って平和に見えるし、道行く人々の表情は平和を象徴しているように穏やかだ。なにより街がきちんと発展している。  どんなカラクリなのだか。魔法か奇跡か、あるいは悪魔の外法でも使ったか。何の事はない。  誰も、日本という“魔境”に入ることが出来なかっただけ。「大審判」より発生した、星の数のような“バケモノ”によって。
/133ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加