極東 日本

5/64
前へ
/133ページ
次へ
   切迫した声がする。あまりに余裕のない声。しかもそれは、どんどんとこちらに近づき。  アリシアは背後を振り返る。そこに人影が見えた。体勢を崩した状態で、全速力を引き留められずに身体が暴れている。  何か、冴えないような男の子。分厚い眼鏡に跳ねた癖っ毛、左手をギプスで吊った、なんとも奇っ怪な少年。  それが、制動を欠いた身体で向かってくる。アリシアは思う。  『もしかして……あれが工作員!?』  『いや絶対違いますよ隊長! かなり危ない状況ですよお互いに!?』  『なに……? じゃあこれはつまり   ーーセクハラね!』  というわけで、コンプライアンスの分からない輩に鉄槌を。戦術格闘の構えを見せて、アリシアはその時を待ち。  一閃。右ストレート。  「ぶわはぁあ!!」  盛大にクリーンヒットした、切れ味鋭いパンチの結果は、派手な転倒。人中を狙った拳であり、それは過たず的中していて。  「……うん?」  何か、妙な感触。ストレートのインパクトが、変な具合で。  『あぁ、ちょっとちょっとちょっと隊長!!』  『なに、オリガ。今はそれどころじゃないの。というか、今すぐわたしのステータスを走査して……』  『これちょっとマジでヤバめかも! この子! 隊長の通う学校の子ですよ!?』
/133ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加