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切迫した声がする。あまりに余裕のない声。しかもそれは、どんどんとこちらに近づき。
アリシアは背後を振り返る。そこに人影が見えた。体勢を崩した状態で、全速力を引き留められずに身体が暴れている。
何か、冴えないような男の子。分厚い眼鏡に跳ねた癖っ毛、左手をギプスで吊った、なんとも奇っ怪な少年。
それが、制動を欠いた身体で向かってくる。アリシアは思う。
『もしかして……あれが工作員!?』
『いや絶対違いますよ隊長! かなり危ない状況ですよお互いに!?』
『なに……? じゃあこれはつまり
ーーセクハラね!』
というわけで、コンプライアンスの分からない輩に鉄槌を。戦術格闘の構えを見せて、アリシアはその時を待ち。
一閃。右ストレート。
「ぶわはぁあ!!」
盛大にクリーンヒットした、切れ味鋭いパンチの結果は、派手な転倒。人中を狙った拳であり、それは過たず的中していて。
「……うん?」
何か、妙な感触。ストレートのインパクトが、変な具合で。
『あぁ、ちょっとちょっとちょっと隊長!!』
『なに、オリガ。今はそれどころじゃないの。というか、今すぐわたしのステータスを走査して……』
『これちょっとマジでヤバめかも! この子! 隊長の通う学校の子ですよ!?』
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