このセカイに叛逆を

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 準合衆国某所ーー秘匿基地『ブラックサイト』。地図に記されることの無い空白地。    禁足地、とも言える。そこで起こる全てを合衆国内の法律が関知することはなく、またここに「収蔵」されている諸々には、かつて合衆国憲法が定めたところの「自由」が保証されることはない。  この場合の合衆国は、一応“旧”の扱いになるか。旧合衆国。旧米国。オールド・ユナイテッド。そんな具合。  そもそも国外の特別収容軍事基地の隠語であった「ブラックサイト」を、そのまま基地の名前として当てはめているあたり何か切羽詰まった事情すら感じる。もっとも、十数年前からステイツが、何もかもを崖際に追い詰められているのは確かなのだが。  女は、そんなとりとめの無い思考を長いこと続けている。薄暗い地下室のひとつ、燻らせる紫煙の一筋、ここが“秘匿されるべき場所”である由縁の一人を前に。  「ーーどうです、指揮官殿。スノウ=グレイシャー仮想国務次官殿? 感想をお伺いしても?」  この部屋に灯る明かりは少ない。幾つも並べられたディスプレイとコンソール、モニタリング機材の駆動ランプ。それらを操る情報技官達は忙しく働いていて、何体かのサポートドローンが技官の手元をライトで照らしている。  そんな忙しなさとは無縁を決め込む丸いサングラスに、怪訝な表情を返す女性。
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