このセカイに叛逆を

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 今の世の中、それが出来れば苦労はしないのだから。普通も普遍も常識も、全て意味は無くなっている。今の巷を跋扈するのは、無秩序と無計画とが掛け合わされた、理不尽な非常識なのだから。  世界は、正気を無くしているのだから。真実その意味を知るものは、本当に限られているけれど。  だからーー  「……取り戻さねばね。我らの世界を」  スノウは小さく、誰にも聞こえないように呟く。もしくは、決意を新たにするように。  口元の煙草を携帯灰皿でもみ消して、壁際にもたれていた身体を進ませる。コンソールにかじりつく技官の一人を退かせ、そこに屹立するマイクに声を投げる。  カチリと、ボタンを押し込み。通じる先は目の前のガラス。その向こう。    真白の強化セラミックが固める、半円状のドーム。部屋の全てが発光しているかのように、影の無い空間。  その真ん中に、少女は立っている。ワンピースのような手術着に身を包み、肩で息を切らせながら。綺麗なブロンドのミディアムショートが、汗で幾筋か顔に張り付いている。  右手には、巨大な黒い鉄の塊。小銃、M4A1。左手には、機能性のみを追求したサバイバルナイフ。目の前に横たわる戦闘特化型自動人形。  返り血の様に身体を濡らす臙脂色のオイルには、血生臭さすら感じる。少女は特に不快とも思わず、顔に飛び散ったそれを拭おうともしない。  『オーケイ。機能調整の完了を確認したわ』  良くやったわね、と。ドームに響く声は白々しく、けれどきちんと労いの念を込めて聞こえる。  少女はそこで、ようやく口元のオイルを拭い取った。足元の敵性対象は沈黙している。  
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