このセカイに叛逆を

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 警戒の意識をほどく。呼吸が通常の速度へと戻る。尖鋭化した感覚が徐々に鈍磨し、極限化した理性の手が緩んだ。  ーーぐぎゅるるる。  「……お腹、減ったなぁ。スノウ、ご飯は?」  『もう少し辛抱なさい。あと少しでデータの最適化が終わるから』  「そんな事務報告じゃあ、わたしのお腹は膨れないのよ? もっと良いニュースを頂戴よ~~」  『はいはい、大丈夫よ。7時にマックスのダイナーを予約してあるから、終わったらみんなで行きましょう』  「うふふ、やった♪」  『返事がちがうでしょ?』  「イエス、マム」  抑え込んでいた欲求が表に来る。どうしようもない空腹感。緊張からの解放感。  だから口調も緩んでしまう。これらの原因を考えてみて、思えばすでに100時間は通して戦っていた事を思い出す。  疑似演算シミュレーター。物的な法則そのものをステータス化するまやかしの箱。ここでの100時間は、外での5分に満たないスパンでしかない。  なのに、この空腹はいやに不条理だ。現実時間との乖離が著しい。抗議のひとつでもぶち上げようか。  そんな事を考えながら、少女は踵を返す。身体を翻し、視線と姿勢がドームの出口に向いた直後。  ーーぽん、と。間抜けな音。足元から。  更に言えば、先ほどボロボロにした自動人形から。破壊された躯体の胴が花開き、空中に何かを射出した。  それがポップアップ地雷の一種だと、分かったのはモニタリングしている人間だけ。安全圏から眺める誰かの群れだけ。
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