フタリナミダ

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フタリナミダ

夢かと思った。 目の前に死んだ彼女がいる。 夢だと思った。 昇る太陽が俺たちの再会を祝福しているようだ。 思えば彼女の死はあまりにも突然だった。 病気でもなく、自殺でもなく。 不慮の事故だった。 涙が止めどなく溢れた。 遺書などは一切なかった。 彼女自身もまた“死”というものが程遠い、そう思っていたに違いない。 病院に着いた時はまだ意識があったと聞いた。 痛かっただろう、苦しかっただろう。 彼女の家族も、親友も、彼氏である俺でさえも。 彼女が生き絶えてからその病院に到着した。 死ぬ間際、彼女は孤独で寂しかっただろう。 誰も来てくれないこの世に絶望しただろう。 「ごめんな、本当にごめんな」 それ以外の言葉が見つからない。 ただ彼女を抱きしめて、謝ることしかできなかった。 「どう、して…」 声を震わせた彼女。 その姿を見て苦しくなる。 時を戻せたらどれほど良かっただろうか。 あの日、あの時俺がいたら君を助けることができたかもしれない。 「もう離さない、ずっとそばにいるから」 だから安心してほしい。 彼女を独りにしないと、もう心に決めているから。 「ねぇ、どうして…?」 彼女が俺に問う。 先程と同様、震えた声で。 少し様子がおかしい。 寂しがり屋な彼女のことだ、いつもなら嬉し泣きをするところである。 けれど彼女はひどく悲しそうな目で俺を見つめていた。 「どうして、後を追ってきたの?」 今すぐにも泣き出しそうな彼女だが、俺の欲しい感情の涙ではなかった。 「君に会えると思ったから」 神様が本当に存在するのであればここは楽園だ。 死に間際、天に願ったことが叶ったのだから。 首を振って涙を流す彼女を俺はただ静かに抱きしめていた。
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