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宵山との電話の後、私は一応湊川君にも確認の電話をしてみる事にした。
居間の柱に掛かっている古い時計は21時を過ぎた辺りを指していた。
私は揺れる振り子をぼんやりと眺めて応答を待つ。
この家は亡くなった叔父の持ち家で、叔父が生涯独り身であったのと、職場である中学校から近かったという理由で、買い取り手が見つかるまで、私が手入れをしながら住む事になっていた。
叔父が使っていた家具も殆どそのままになっている。私は二十代後半で一戸建ての主人となれた訳だが、この家のオンボロさ具合は尋常ではなかった。
『あ、湊川君? 護堂ですけど……』
『あ〜! 護堂先輩、お久しぶりです! この間はどうもお世話になりました!』
電話が繋がると、相変わらず軽い調子の声が勢い良く聴こえてきた。
『ああ、お蕎麦まで贈ってもらっちゃって悪かったね。丁度年末いただいたよ。とても美味しかった。ところで今、宵山から聞いたんだけど……』
私が依頼の件について尋ねようとすると、こちらが最後まで話さぬ内に、湊川君がすかさず口を開いた。
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