占いって、どうやるの?

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「わたしをここに呼んだ本人が」  前任者だった? 珀花さんがそういうような呆然顔となった。  わたしも唖然となる。 「そんなこと聞いていませんけど」  本来なら有月サンに文句を言いたい珀花さんが、守内さんに平坦な口調で、そっと苦情を言った。  おや、という顔を守内さんが見せる。 「あなたの前に別の誰かが同じ役目をしていた。などと訊いていたの?」   「いえ。まさか有月が前任者、なんて思いもしないから。訊くことすら思いつかなかった、です」  わたしも珀花さんに激しく同意する。 「有月はあとで問い詰めるとして。で、その有月は、どのように入居者管理をしていたのでしょうか」 「あの人って、二面性があるのよ。判っている?」 「なんとなく。そうでなければここに関わっておられないですよね」 「そうよ。新旧入居者の誰ともお話できないわね。そもそも、入居希望者をここまで連れてこられないわよ」  守内さんが湯呑みを手で包んで、コロコロと笑う──その目。鋭い。笑っていない。  気づいたわたしは、そろっと間を空けるように身をよじり、わずかばかり遠離っていく。 「珀花ちゃんは、占いを通してでなければ、ここに居る人に応対できなかったでしょ?」  珀花さんが肯く。 「しかも有月が居なければ、わたしは役立たずでしたね。だから入居希望者を見つける間、自分が居なくても道案内できる者を捜していたのですね」  今度は守内さんが軽く首肯した。 「では、この咲来ちゃんは適任者だと」 「そのように思って連れてきた節はあるわね」 「彼女は直感が優れている?」 「霊感があるのかしら」  わたしに関するとんでもない話が繰り広げられていく。早めに参加して訂正する必要が生じてきた。 「あの~。わたしはそこら辺に転がっている一般庶民で、霊感など、今までの人生で考えたこともない単語ですので。妙な話はご遠慮申し上げたく存じて思っております」  焦り、ちゃらんぽらんな丁寧語を口走る。 「……無自覚?」 「天然物だと思うわ」  守内さんと珀花さんが顔を見合わせた。 「天然素材」 「逸品ね」 「でも何もナシで道案内は、あとで文句言われたときに困らないでしょうか」 「困る、とは?」 「わたしはカード占いをして、その結果を道案内として提示していたわけです。ですが直感で道案内すると、不本意な結果だとあとからクレームを着けられた場合、言い逃れできませんよね。わたしはカードのせいにできました。でも直感だと、コレのせいだから仕方ないと言えなくないですかね」  直感として言い放った者を逆恨みする、と珀花さんがおどろおどろしいことを言い始めた。  マンションの住人管理業務が、どうしてそのようなオカルティック話に結びつくんだ。からかわれている気がする。  ドッキリでした!のプラカードはいつ出てくるのだろう。プラカードがいつまで経っても出てこないので、話が続いていく。
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