2:調査

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 さらに2週間が経った。  探し人の依頼は全く変化がなかった。しかし、金田には大きな変化があった。  これまでの金田であれば調査が難航すれば即座に依頼を断っていた。しかし今回は難航すればするほど、寝る間も惜しんで情報収集に打ち込んだ。これまで避けてきたヤバい手段を使ってでも情報を集めた。情報のためには金に糸目をつけなかった。彼を知る人は、彼の変化に皆驚いた。  しかし、彼のその働きと天賦の才をもってしても手掛かりは掴めなかった。 「どこにいるんだ、佐藤庄吉さん…。」  公園のベンチに倒れるように腰掛ける。調査に没頭していたため着替えも碌にしていない。げっそりとした顔つきと合わさり、今の金田は浮浪者のようだった。ポケットから携帯を取り出し情報屋への首尾を確認しようとしたとき、今日が25日なのだと気が付いた。 「あ…。」  金田はしばらく固まり、そして大きな溜め息をついた。  金田は銀行で金を下ろすと、その足で大学病院へ向かった。いつもであれば身なりを整えていくのだが、このときの金田にはそんな気力すら残っていなかった。 「金田の家族です。今月のお支払いと…佐藤先生いますか。」  受付で看護師にいつものやり取りをする。金田の普段とは違う様子に、看護師は少し怯えながら奥に行った。数分後、看護師が「こちらへ。」と、怯えながら医者の部屋まで案内した。部屋に入ると、禿げた頭を撫でながら年老いた医師が、金田の方へ椅子を向ける。 「ふむ、様子がおかしいと聞いていたけど、確かに普通ではないね。大丈夫かい。」 「はい、少し仕事が立て込んでいるだけです。こちら今月の支払いです。」  金田は分厚い封筒を医師に手渡す。医師はそれを少し寂しそうな表情で受け取った。金田はその表情を見逃さなかった。 「なにかありましたか。」  医師は一瞬言うのをためらったあと、静かに金田に告げた。 「そうだね、君のお爺さん。もうあまり長くはないようなんだ。」  いつかは来るであろうと、金田も覚悟はしていた。それでも、唯一の身寄りがいなくなるショックには耐えられなかった。金田は震える声で尋ねた。 「どうにも、ならないのですか。お金が足りないのなら、もっと稼ぎます。だから…」  そんな金田の哀願に、医師は「すまない。」とだけ答えた。 「君はとても頑張っている。育ての親とは言え、血も繋がっていない老人のために、ここまで出来るのはとても凄いことだ。我々もそれに応えねばと全力で治療にあたってきたつもりだ。しかし、こればかりはどうにもならない。本当にすまない。」  医師の言葉を聞き、金田は椅子に力なく座り込んだ。
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