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3:結末
再会の日は、お爺さんを説得してから1週間後にした。
病院の前にタクシーが停まる。そこから降りてきたのは依頼人である老婆と、孫である女性だった。女性は老婆の身体を支えながら、タクシーから降りるのを手助けする。
「いよいよだね、お婆ちゃん。」
無事にタクシーを降り、女性は大学病院を見上げながらとなりの老婆に話しかける。老婆はその言葉に静かに頷いた。
病室のドアの前では、金田が待っていた。
「この度は本当にありがとうございました。私は未だに夢を見ているようで…」
お婆さんは金田の前で深々と頭を下げる。そんな老婆に金田は優しい声で伝える。
「お婆さん、夢でも嘘でもなく、紛れもなくあなたが探していた『佐藤庄吉』さんがこの奥に居ます。彼もあなたとずっと会いたがっていました。あなたから離れたことをこの70年間後悔し続けていました。どうかこれまで伝えられなかった言葉を、彼に伝えてあげてください。」
そう言って病室のドアを開け、老婆に中に入るよう促した。老婆がゆっくりと中に入るのを見届けると、金田は静かにドアを閉めた。2人がどんな言葉を伝え合うのかは非常に興味があったが、それを自分が聞くべきではない思ったためだ。
ポケットの中から契約書を取りだす。悪徳の数々がちりばめられた、そして成功報酬として全財産をもらうと書かれた契約書だ。金田はその契約書を2つに破くと、病室をあとにした。
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