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1人、美術室にきた俺は彼女が残していった絵を探した。
窓際にクロスのかかった一枚の絵があった。クロスを外してその絵を見た瞬間、思わず笑みがこぼれた。
美術準備室に絵を取り行き、それを彼女の絵の隣に並べた。
「きっと、これが答えだったんだよぁ。」
彼女に触れた瞬間、このままではいけないと思った。
俺は教師で、彼女は生徒で、それはどうしたって変わることはない。彼女の世界はこれから無限に広がっていく。たくさんのことに触れ、たくさんのことを学び、たくさんの人と出会う。そんな彼女の人生を、この居心地の良さで止めるわけにないかなかった。
ただ、自分の気持ちなど最初わかっていた。見ないふりをしてきたこの気持ちはいつか思い出になるだろうか。彼女の気持ちも、いつか思い出になるだろうか。
しばらく2つの絵を眺めていた俺は、その思いに蓋をふるように絵にクロスをかけて美術室を後にした。
最後に卒業おめでとうなんかよりも本当は伝えたかった思いがあった。伝えたかった言葉、それは、それはなーーー
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