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「いい絵かくよね。」
「そう?」
「うん。」
「せんせーもいい絵かくね。」
「いや、おれ一応教師だからね。」
ククッと笑った先生はまたスケッチブックにペンを走らせる。
きれいな線は重なり合いひとつのもになっていく。その過程を見るのが好きで、これはずっと見ていられるなと思った。
惹かれるように思わず先生に身を寄せていた。
「うし、こんなもんか。どう、…」
「っ、」
先生の声に顔を上げた瞬間、息がとまるかと思った。思ったよりも近くにいたらしい。先生の顔が目の前にあった。動いたら触れるんじゃないかと思うくらい距離は近くて。息をするのを忘れそうだった。
「ごめんごめん。集中しすぎたや。」
「あ、うん。」
いつもみたいにクシャッと笑いながら先生はわたしと距離をおいた。
顔が、熱い。きっと、赤い。バレないように視線を外した。
「よし、今日はここまで。暗くなる前に帰りな。」
「先生みたい。」
「なに言ってんの。先生だよ。」
そう言って笑う、夕日に照らされた先生の横顔がやけにきれいだった。
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