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「あ、絵の具、ない。」
描き途中の絵にカバーかけて準備室の扉を開けた。
「ん?どうしたの?」
「絵の具、借りてもいい?」
「おーいいよ。」
画材やら何やらが置いてある棚を漁り絵の具を探した。
たくさんの絵の具がいくつかの箱に入っていて、全部学校のものなのかと聞いてみたら、卒業する生徒たちが持って帰るのは面倒だからと余った絵の具を置いていったものだと先生が教えてくれた。そのお陰であまり絵の具を買わなくても使いたい色があったりするからとても助かっていた。
「てかさ、自宅研修中なのによく学校来るね?」
「んー?まあ学校近いし。ひまだし?」
はは、なんだそれと先生は笑う。
いつのまにか冬休みも明けて自宅研修期間に入っていた。進路が決まっているわたしは特にやることもなく昼過ぎに美術室にきていた。昼間にここに来るのは先生の体が空いてると思ったからだ。5.6限の時間は授業があるし、放課後は部活がある。先生を独り占めできるのはお昼過ぎのこの時間が1番良かった。と言っても今日は授業も部活もない日だけれど。
「それに、絵も完成してないし?」
「卒業までには完成する?」
「んー、その予定だよ。」
よく考えたら、独り占めしたいって、なんだ。自分の気持ちに首を傾げながら、なお絵の具を探した。
青い絵の具はたくさんある。でも少し違う。言うなら、あーそう、あんな感じの青色。窓から見える青空を指差し聞いてみる。
「ねえ先生、あんな感じの青い絵の具ない?」
「そこにあるのしかないよ。」
「えー、残念。」
「…じゃあ、作るか、青い絵の具。」
「え?」
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