夜明け

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忌々しい朝がくる。 木立の隙間から見える空が薄明るくなってきた。いつもならとうに棺の中に横たわる時間だ。 だがこの無様な姿は何だ。胸に杭を打ち込まれぴくりとも動けやしない。 すでに白い光が夜空に攻め込んできている。 もはやこれまでか。ここまで醜い空は見たことがない。薄紫やら水色やら橙やらの色が一緒くたになって出来の悪い水彩画のようだ。 白い光は徐々に明るさを増してゆき、月を押しつぶし星を飲み込んでいく。闇を貪欲に取り込む姿は無粋としか言いようがない。冷たく張り詰めた空気は悪くないが。 ああ、遂に光の塊が顔を覗かせる。なんという不躾な眩しさだ。月はもっと器用だ。控えな光ですべてを照らし出すことができる。 光が目に沁みる。 なぜ私たちがこんな野蛮なものを恐れなければならぬ。 なぜ飽きもせずに朝がくる。 体が軽い。意識が遠退く。いよいよ朽ちてきたのだろう。砂が風に舞い煌めいている。 律儀なものだ。忌々しい太陽よ、お前は私の体までも照らすのか。 終
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