2人が本棚に入れています
本棚に追加
私には中学生のときから10年間、
一途に想い続けている人がいる。
「今日、大丈夫?」
彼とは定期的にご飯に行ったりするが、
シャイな彼からお誘いが来ることは
とても珍しいことだった。
「うん、大丈夫よ! ご飯行こ!」
今回も変わらず行きつけの地元の定食屋さんに行くことになった。
今年大学を卒業し
来年からはそれぞれの道を歩むことになる。
偶然、ずっと地元で過ごしていた彼とも
もうこんな風に会えなくなってしまうのだろうか。
「やっぱりあの店の定食は最高!」
他愛もない会話をしながら
ご飯を食べ終わった私たちは
家の近くの川沿いを散歩していた。
これが毎回お決まりのコースで
若者らしい派手さはないけど
彼と過ごすこのパターンが1番幸せで、
安心する。
「じゃあ、そろそろ帰るね!」
いつものように別れを切り出したときだった。
「……ごめん…!」
突然彼はそう言うなり
気付けば私は彼の腕の中にいた。
何が起こっているのかすぐにはわからなかった。
「…どうしたの…?」
心臓の音が騒がしい。
「ごめん
今までずっと気づいていないフリしてて
ごめん…」
彼は私を腕から離した。
「信じてくれるかわからないけど
実は僕もずっとずっと好きだった。」
信じられなかった。
ビックリして半分上の空で聞いていた。
「今の彼女とは君を忘れるために
付き合ってた。
でもどうしても忘れられなかった。
君のことがずっと大好きで
彼女とはこの間別れた。
中学生の時から好きだったし、
君が好きでいてくれていることも知ってた。
なのに勇気が出なくて何もできなかった。
本当に…ごめん。」
彼から溢れる言葉は
私の知らない事実ばかりで
ただただ驚いた。
でも普段あまり話さない彼からの言葉は
自然と本当なんだ、と思えた。
「…………信じてくれる?」
彼からの言葉で真実を知った私の頬には
気づけば一筋の涙が零れ落ちていた。
「……うん!」
自然と笑みが溢れた。
「長いこと待たせて本当にごめん。
ずっと大好きだし
これからもずっと大切にします。
……僕と付き合ってくれませんか…?」
「……もちろん!」
心地良い秋風が吹き抜ける
よく晴れた日のことだった。
最初のコメントを投稿しよう!