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「あーあ。死んじゃったよ」
「死んじゃったね」
何の感情も含まれない彼らの言葉に、俺は首だけを伸ばして彼らの視線の先を覗き込もうとした。
コンクリートの四角い部屋に、未成年の子どもが4人──いや、3人になっちゃったか。1人死んだんだもんな。
「これ、どうする?」
「ほっとけよ。そのうち誰かが見つけんだろ」
暫し2人はしゃがみこんで死体を見ていたが、やがて飽きたのか、立ち上がると、つまらなそうに俺のほうへ歩いてきた。
邪魔なものがなくなって、俺からも死体が見えた。
丸太のように横たわり、顔だけがこっちを向いている。落ち窪んだ空洞みたいな目が、じっと俺を見ていた。
「なんだよ、見てんじゃねぇよ」
「もう死んでるよ?」
俺の隣に腰を下ろしながら「2」が呟いた。
「本当に死んだのか?」
「本当に死んだよ。見ろよあの皮膚の色。もう完全に逝っちゃってるよね」
透き通るような淡い黄色。文字通り、血が通っていない肌の色。遠くからでも解る。あれはもう脱け殻だ。
「あいつまだ、来たばっかなのにな」
「2」と俺の間に「1」が座った。冬の始まり、高いところにある窓から射し込む日がオレンジ色になる頃には、背中をくっつけてるコンクリートの壁がどんどん冷たくなっていく。
「まあ、しょうがないよ。俺たちビョーキになっちゃったから、ここに連れてこられたんだもん」
そう「2」が言うと、「1」は小馬鹿にしたように鼻で笑った。
「しょうがない、か。おまえさんの言う通りだよ、この世のすべては"しょうがない"んだ」
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