ある夏の日

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傘ひとつに2人で並んで歩き始めるとシュンくんは自然に繋いだ手を離し濡れないように傘の持ち手を変える。 それでも2人の外側の肩は雨の雫が落ちていた。そんなの気にならないように昔よく話していた時のようにたわいのない話をしながら歩いていく。 最初は緊張していた私もシュンくんって、こんな口調だったとか、こんな風に笑うんだったと思い出しながら、横を見ると小さい頃とは変わって背が伸びたシュンくんを見上げるように視線を投げた。 自分を見ていると気がついたシュンくんは一瞬の時間(トキ)、無口になり、それでも何か言いたそうに息を吐いた。 「美波…あのときは…ごめん」 あのとき…? あっ…私が失恋した日の事かな。 「ううん…大丈夫だよ」 あの日からシュンくんに対する気持ちが迷子になって辛い時もあったけど、今日この時間(トキ)で帳消しになっている自分がいた。 ちょうど【約束の橋】の辺りを歩いていた。 シュンくんは立ち止まり私に傘を持たせると「使って」と傘から出ていこうとした。 「シュンくん濡れちゃうよ!」慌てて声をかけるとシュンくんは振り向き、「すぐ家につくから」と目を細めて笑う。 私はこの時間(トキ)が終わってしまうのが寂しくて、こんな時間(トキ)はもう、ないと思うと、つい引き留めてしまった。 「傘…どうしたらいい?」 びっくりするくらい自分では大きな声がでた。 「返すのはいつでもいいよ」 「それじゃ、いつになっても返せないよ、きっと…」 ん~。シュンくんはちょっと考える仕草をすると「2時間後、この約束の橋で待ち合わせな。」 シュンくんが約束の橋の事、覚えてた。凄く嬉しくて私の心は一気に熱くなり、ふわふわとした。 「わかった!後でね」 シュンくんは爽やか笑顔を残し走って行った。
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