朱に溶ける

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 茜は小柄な娘で、歳は私より五つ下だった。肌は雪のように白く、髪は烏の濡れ羽根のように黒く、そして零れ落ちそうなほど大きく丸い瞳を持つ、たちまち近所で噂になるほど可愛らしいおなごだった。  引く手数多であろう、こんなに可愛らしい娘が、よりにもよってこんな私のところへやってくるなど、一体どういうことかと驚いたのだが、よくよく問い合わせてみれば、どうやら、茜は頭が弱かった。  彼女はまるで計算で、指を折り曲げて数えるのが精いっぱいであり、例えば五と六を足せば何になるのか彼女はわからない。一と一を足せば二になるというのも、母親に指を折り曲げて数えろと口酸っぱく教えられたために、かろうじてこなせる、というほどであった。ものを理解するのもやけに遅く、動作ものろい。米を炊くのも、長年一人暮らしをしてきた私の方がよっぽど早いだろう、というほどの緩慢さだった。  そういうわけで、いくら見目が良くても……といろいろな家をたらいまわしにされ、結局、こんなお化け男の家へと送られてきたらしかった。  本当に可哀想だと思った。  茜は心底私に怯え、娶ってから数週間の間は、私が夜中に目を覚ますと、いつだって啜り泣きをしていたのだった。一年も経てば、少なくとも私の容姿には慣れたが、今度は私の内面を嫌ったのか、また啜り泣きが聞こえてくるようになった。  家を離れ、こんな男の身の回りの世話をしなければならない娘に対し、私は優しい言葉の一つもかけなかった。いいや、かけられなかった。  私は出会って一年もしないうちに、茜を本気で好いてしまったのである。
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