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――でもって、クリスマスに紛れて……忘れられることも少なくないんだよなあ、俺の誕生日。
高校生にもなってまで、誕生日を誰かに祝って欲しい、だなんんてことを恥ずかしげもなく言うつもりはない。けれど、それもケースバイケースなのだ。二年前に付き合っていた彼女も、結局のところそれがきっかけとなって別れたようなものだった。誕生日はきちんと教えたはずなのに、彼女ときたら“クリスマスは絶対にあけておいてね”とそれしか言ってこなかったのである。
プレゼントなど、なくたっていい。忙しいなら一緒に過ごせなくたってそれでも構わない。
ただ、それでも――ただ。おめでとう、の一言があるだけで良かったのだ。クリスマスではなく、誕生日おめでとう、と。それだけで、自分が蔑ろにされていないと、大事にされているのだと思うことができるなんて。バスケ部のセンターを務めるような巨漢の男が情けないと、自分でもそう思うけれど。
――黒須達、どうすんのかな。なんか、みんな楽しそうだったな。
煌びやかな町を歩く者達はまちまちだ。会社帰りのサラリーマンらしき姿もあれば、歩きスマホをしながら顔をしかめているOLもいる。
きゃあきゃあと何が楽しいのかわからないが、はしゃぎながら歩く制服姿の少女達もいれば、見せつけるようにうちゃついて手を繋いでいるカップルもいる。
多分、いつもとさほど変わらない光景だろう。誰もがみんな楽しそうなわけでもない。今日は金曜日なので少し遅くまで遊んで帰ろう、と考えている者もいるにはいるだろうが。それは何も十二月だからという話ではない。いつもの光景だ。クリスマスだから、クリスマスまでのほぼ一ヶ月、ずっとはしゃいで暮らすほど人間は暇に生きてはいないのである。
それでも、誰も彼も浮かれているように見えてしまうのは。あくまで、俺の気持ちの問題でしかないのだろう、きっと。
――情けね。……なんで泣きそうになってんだ、俺。
不思議と、別れた彼女に誕生日を忘れられたのと同じくらい、ショックを受けている自分がいる。
いつの間にか手元のカフェオレもビックサンドもすっかり冷たくなってしまっていた。一時間以上、ぼんやりと外ばかり眺めて、一体自分は何をしているのだろう。時計が止まることもなければ、こうして時間稼ぎをしたって帰る環境が変わるわけでもないというのに。
頼んだ品を、少ししょっぱい気持ちでがつがつと食べると、重い腰を上げて店をカウンターにお盆を返した。先払いだから、もう精算は済んでいる。あとはもう、このまま駅に向かって家に帰るだけだ。
「メリークリスマス」
店を出たところで、ヤケクソ気味に小さく呟いた。まだキリストの生誕祭には早すぎる、それでも本番さながらに、無駄に光り輝く風景を皮肉るように。
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