十二月六日

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 ***  自宅は、電車で駅三つの距離だ。最寄り駅の周りもさほど変わらずビカビカと目に痛い光ばかりが飛び込んでくる。  眩しいばかりの景色なのに、どうして自分の目の前だけはこんなにも重苦しいのだろう。まるで一枚、闇色のカーテンが覆いかぶさってでもいるかのようだ。忌々しいクリスマスカラーの駅前広場を抜け、一本裏通りに出ればいつも通りの暗い住宅街が広がっている。駅の西口から約十分。そこに、俺が住む灰色のマンションがある。 ――此処で過ごす十二月は、今年が初めてか。  オートロックでもなんでもない、ややボロっちい年季の入ったマンションだ。何度か黒須達を呼びつけて、ゲーム大会をしたこともある。そういえば、夏に黒須の誕生日会――という名目のゲーム大会をやったのも自分の自宅であっただろうか。  あれはバカバカしかったけれど、楽しかったな、と思う。心のどこかで、そんな風に誕生日も過ごせたらいいな、なんて期待していた自分がどこかにいるのは事実だ。約束もしていないし、黒須以外に己の誕生日も教えていなかったというのに、アホくさい話ではあるけれど。 ――どうせ、今日も真っ暗なんだ。わかってるよ。  それでも、自分は家に帰るしかない。  此処にしか、自分が生きていく場所はないのだから。  それを選んだのもまた、自分なのだから。 「ただいま」  鍵を回して、誰もいない空間へ声をかける。返事など帰ってくるはずもなく、目に飛び込むのは明かりのついていない真っ黒な部屋――そのはずだった。  それなのに。
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