序章〜異世界に召喚されし勇者たち《2話〜黒き覇王の波乱の旅立ち《前編》》

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序章〜異世界に召喚されし勇者たち《2話〜黒き覇王の波乱の旅立ち《前編》》

 ……クロノア(黒城 麻里亜)は、祭壇の上で目覚めた。そこは、薄暗い洞窟のような場所だ。  眠い目を擦りながら、クロノアは辺りを見回す。 (ん〜……ん? ここって……洞窟の中だよね)  洞窟内には、たいまつの明かりが点り数ヶ所に置かれている。それらは、辺りを微かに照らしていた。 (そういえば、なんでこんな所で寝てるの?)  そうクロノアは考えている。すると洞窟の隅の方に、誰かが居ることに気づいた。  そうそこにはゲームやアニメなどに登場するような、いかにも見た目が悪役そうな雰囲気のダークエルフの男性とデューマンの女性がいる。  その二人は、何かを話し揉めているようだ。 (これって夢?)  すると目覚めたことに気づきダークエルフの男性は、クロノアへと近づいてくる。 「目覚めたみたいだな。ん〜、でもな……ディアナ。本当に、コイツが救世主なのか?」  どうやらデューマンの女性はディアナと言うらしい。 「ハウベルト。そのはずだが、アタシにも分からん。なんで女なんだ?」  そう言いながらディアナも、クロノアに近づいてきた。 「えっと……状況がみえないんですけど??」 「ああ、すまない。召喚しておいて、放ったらかしにしてしまったようね。アタシは、召喚魔導師のディアナ。そして、コイツは魔法騎士のハウベルト」 「ダークエルフのイケメン魔法騎士ハウベルトとは、俺のことだ!」  そう言った瞬間、ディアナのドロップキックがハウベルトの後頭部を直撃する。そして、ハウベルトは失神した。 「はぁ……何を言ってるんだか。あっ、すまない。コイツはどうも美的センスがズレてる。そのためか、自分がイケてると勘違いしててね」 「そうなのね。……それより、召喚って?」 「ああ、話が逸れたわね。そう、アタシが召喚したの」  そう言いディアナは、ニコッと笑みを浮かべる。 「えっと、なんのためにですか?」 「そうねぇ。それは、アタシ達の国を救って欲しいからなんだけど」  ディアナはそう言うも、疑いの目でクロノアをみた。 「ん〜、やっぱりどうみても女なんだよなぁ。召喚魔法は、間違っていないはずなんだけど?」  ディアナはクロノアを覗き込んだ。 「国を救うって……私がですか?」 「本当にコイツに、国を救う力があるのか? どう考えても疑問だ!」 「えっと、私もそう思うんですが」  クロノアは、ふと自分が普段と違うことに気づく。 (あれ? 私の体、ゲームの姿で召喚されてる。周囲には、なんかコマンドとステータス画面的なものが……)  そう思いながら、ステータス画面を確認してみる。 (それにこれって、あのゲームのレベルとステータスのままだし……名前もクロノア・マリース・ノギアになってる)  そう思いながらクロノアは、辺りを見回したあとディアナへ視線を向けた。 (ここが異世界なのは、間違いない。でも、救世主ってどういう事?)  クロノアは不思議に思い色々と考える。  するとディアナは困った顔をし、どうしたらいいかと悩んでいた。 「ん〜長に、救世主を召喚して連れてくるようにって言われてるし」  ディアナが自問自答しているとハウベルトは、ドロップキックの失神から目覚め提案をする。 「ディアナは間違いなく、優れた召喚魔導師のはずだ。失敗するとも思えない」  ハウベルトはクロノアとディアナをみた。 「それなら、こう言うのはどうだ。この俺と勝負して勝ったなら認める。そうでなければ……そうだなぁ。ひんむくか? それとも殺すか? 奴隷にするか?」 「えぇぇえええー!?」  クロノアは思わず絶叫する。 「いい加減にしないか! お前が言うと、冗談に聞こえんのだぁぁあああー!!」  そう叫びながらディアナは、ハウベルトに目掛けて膝蹴りをした。  するとディアナの膝蹴りが鳩尾に入りハウベルトは、余りの痛さに地べたに蹲る。 「あはは……いっそお前が、救世主になった方がいいのではないのか?」  そう言われディアナは、ハウベルトの顔をみて溜息をついた。 「……こいつは、悪いヤツじゃないのだけど」  ディアナはそう言いながらクロノアの方を向いた。 「でも、そうね。ハウベルトが言うように、実力をみるのも手かもしれない。それに、アタシよりもハウベルトの方が戦闘に向いている」 (なんで、こんな話になってしまったの?) 「んー、俺でもいいが手加減はできない……大丈夫なのか?」  そう言いながら頭を二、三回かいた。 「本当に救世主ならば、お前でも敵わないはず」  クロノアは殆ど話に入れず、流れで勝負することになってしまい。 「あの〜、本当に戦うの?」 「ええ、その方が本当に強いかを早く見極められる」  そうディアナが言うとハウベルトは辺りを見渡す。 「ん〜、ディアナ。ここでは、少し狭くないか?」 (えっと、どうしよう。私はゲームの中なら、殆ど負け知らずだった。だけど、大丈夫なのかな?)  そう考えクロノアは、どうしようかと模索している。 (ゲーム感覚で、できるなら多分大丈夫だと思う。でもその前に、この対決って意味があるのかな?)  色々と考えているとディアナは、あることに気づきクロノアに聞いた。 「そう言えば、名前を聞いてなかったね」 (えっと……今更ですか……)  クロノアは呆た顔になりながら答える。 「えっと……私は、クロノア・マリース・ノギアです」  そう自己紹介すると、二人は目を丸くし驚いた。 「あ、えっと……。余りにも長い名前で、流石に呼ぶのに困る。なんて呼べばいい?」  ハウベルトは、汗をたらしながら困ったように言う。 「あっ! 名前なら、なんて呼んでくれても構わないよ」 「そもそもこの世界に、そこまで長い名前のヤツがいなかったからなぁ。……じゃ、クロノアでいいか。その方が呼び易いし」  そうディアナに言われクロノアは頷いた。 「いい加減、早く判断しなければ……次を召喚するにしても遅くなってしまう」  そう言いハウベルトは、こっちだと言うような仕草でクロノアに指示する。  そして三人は、洞窟の外へと向かったのだった。
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