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時刻は午後6時30分。
3時間ほど、オウジ様と、テレビを見たり、トランプをしたり、ただただお話をしたりして過ごした。
その3時間はもう本当に幸せで、あっという間で、最高だった。
もうオウジ様と話すのに、全く緊張はなくなっていた。やっぱり恥ずかしさはあるけど。
でも、楽しい時間もそろそろ終わりかな。時間が止まればいいのに。なんてね。
「あー。そろそろ時間、やべーな。」
オウジ様が、時計をちらっと見てちいさく舌打ちした。
「うん。そうだね。オウジ様ってお家どの辺?」
「ちょっと遠い。自転車で、10分ぐらい。」
オウジ様は難なく答えた。
「え、じゃあ、こんな時間までいてよかったの?自転車、ないよね?」
今日、オウジ様と会ったときのことを思い出す。たしか自転車は持ってなかった。
「大丈夫だって、ありがとな、心配してくれて。夢羽のお城も、楽しかった…じゃあ、またな。」
にしし、と意地悪く笑うオウジ様にドキッとしてしまう。わたしがオウジ様のお家を、お城ってよんでしまったこと、覚えててくれたんだ!
でも、不思議。夢の中での出来事もオウジ様は知ってるんだ。
そんな些細なことでも嬉しくて胸が弾けそうだった。
「うん!!あ、気をつけてね!」
玄関の前で言葉を交わす。わたしは、顔の横で手を振った。
王子様の前では、できるだけ女の子らしく振る舞う。
だって、もう会いたくない、なんて思われたら嫌だから。
「じゃあ。」
「うん、また。」
オウジ様はわたしに背を向けて歩き出した。
わたしは、その後ろ姿を静かに見つめていた。見えなくなるまでずっといるつもりだ。きっとこんな奇跡もう起こらないから、目に焼き付けたくて。
そのとき、オウジ様が、急に振り向いた。
「…え?」
「…あのさ、…また、今日みたいに遊んだりしような!」
少し恥ずかしそうに視線をそらしながら、オウジ様は言った。
びっくりして固まっているわたしをしばらく見つめた後でくるっとまた、背を向け、走って帰って行った_。
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